第5章「詩歌と絵を楽しむ 広重の短冊判花鳥画」では、広重の花鳥版画のなかでも短冊判という形式で出版されたものに焦点が当てられる。これらの作品には俳諧などの讃が記されており、描かれた絵だけでなくその讃の内容を紐解くことで、より広重作品に対して理解を深めることができる。会場では、記念切手の図柄としても選ばれたことのある《月に雁》も紹介されている。また、ほかに所在が知られていない唯一の版と言われている伊藤若冲の作品も日本初公開となっている。こちらも合わせて注目してほしい。


最後の第6章「小さく愛しき花と鳥」では、ロックフェラー・コレクションならではの、小画面の花鳥版画に注目した内容となっている。本章で紹介される作品のなかに、いくつか未裁断のものがある点に触れたい。例えば歌川広重の《鳥瓜に自白/芍薬に小鳥》は、本来上下で裁断され、2つの作品として出版されるはずだったが、裁断前の状態で残っている。同じく広重の《鰹/蝶/蝙蝠》は3つに裁断される予定だったものだ。制作途中ともいえる未裁断の状態で見られる貴重な機会だと言えるだろう。
本章では、改めて、今回紹介された作品がアビーの目を通して収集されたものであることが強調され、花鳥版画を愛したひとりのコレクターの姿を思い起こさせる工夫がなされているように感じる。


開館30周年を締めくくる展覧会として開催された本展は、海外の美術館との交流を積極的に行ってきた同館ならではの企画に挑んだものだと言えるだろう。なお同館では、本展にあわせ、同館のコレクションより選りすぐった摺物を紹介する展覧会「うるわしき摺物一縁をつむぐ浮世絵」も開催されている。こちらもあわせて注目してほしい。



















