「10年、20年待っても出会えない」作品への期待
──まず、クリスティーズがDIC川村記念美術館コレクションを扱い、オークションに出品することの意義についてお聞かせください。
タン・ボー(以下、タン) 今回のプロジェクトは、私たちにとっても非常に特別なものであり、このように希少で、かつ重要なコレクションをお預かりできたことを大変光栄に思っています。川村勝巳氏は1970年代から本格的にコレクションを築き上げられ、DIC川村記念美術館は1990年に開館しました。長い年月をかけて形成された、まさに美術館の歴史そのものを体現するようなコレクションです。
オークション市場においても、これほど重量感のある美術館コレクションがまとまって登場する機会は極めて稀です。私たちクリスティーズにとっても、コレクターの皆さまにこのような作品群をご紹介できることは非常にエキサイティングな機会だと感じています。現在の市場では、とくにこのクラスの「巨匠による代表作」を求める声が強く、まさに時宜を得た出品だと言えるでしょう。

──DIC川村記念美術館のような著名な美術館が、これほど多くの作品を一度に手放すことについて、欧米のアート界や市場ではどのように受け止められていますか。
タン このニュースを公表して以降、すでに欧米でも複数のメディアで報道されています。日本ではとくに、美術館の閉館に対する惜しむ声が強いと聞いています。
いっぽうで、コレクターやアートマーケットの視点から見ると、全体的には非常に前向きで、むしろ高揚感を伴った反応が多いと感じています。というのも、このクラスのモネやシャガールの作品は、10年、20年待ってもなかなか出会えない存在だからです。
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