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「アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦」(豊田市美術館)開幕レポート。歴史から姿を消した女性作家らの挑戦の軌跡【6/6ページ】

 具体美術協会のメンバーとして知られる田中敦子の《地獄門》は、本展出品作のなかで最大級である。《電気服》で有名な田中だが、その後のペインティング作品も印象深い。反復的な円とそれらを結ぶ無数の線により、見えないネットワークが造形化されている。さらに塗料で描くといった新しい素材を使うことにも積極的に取り組んだ。同じく具体美術協会のメンバーであった山崎つる子は、都市化する煌びやかで猥雑な社会を画面に反映しているようだ。本展では光を用いた立体的な作品も展開されている。

展示風景より、田中敦子《地獄門》(1965-69)
展示風景より、山崎つる子《作品》(1957/2001)

 宮脇愛子は、作品が存在する環境も含めてひとつの作品と考える。会場で紹介される《作品》(1967)は、作品をのぞいた先にある世界そのもの、それを介して知覚される現象自体を作品ととらえる。会場ではぜひ作品をのぞきながら宮脇の作品に参加してほしい。

展示風景より、宮脇愛子《作品》(1967)

 『アンチ・アクション─日本戦後絵画と女性画家』の著者である中嶋は、本展の開催に際して次のように語る。「どの作品も、作品そのものに強さがある。女性作家を紹介する展覧会ではあるが、『女性性』に着目するのではなく、各作家が様々な表現に挑戦し生まれた作品そのものの力を感じて欲しい」。

 戦後の批評の動向も相まって、歴史から見落とされてしまっていた女性作家たち。その作品をいざ目の前にすると、どれも等しく強烈なパワーを持っていることがわかる。今このタイミングだからこそ、改めて彼女らの作品を正面から見直す機会としたい。