「持続するもの」を求めて
──The Wang Contemporaryはチャイナタウンに根ざしたミッション主導型の文化機関として位置づけられています。いまこのタイミングで、お母様のイン・ワン氏とともにこの空間を立ち上げた背景には何があったのでしょうか。
ワン 長いあいだ、この構想は母と私のあいだで交わされる対話にすぎませんでした。
私たちは、季節ごとに更新されるものではない何か、つまりファッションのカレンダーに縛られない場をつくりたいと話してきました。20年にわたり変化の速い業界で活動してきたなかで、私は次第に「持続するもの」について考えるようになったのです。何が残り、何が根を張るのか、ということを。
また、チャイナタウンという場所も重要でした。ここは私の人格形成に影響を与えた地域であると同時に、絶えず変化を続ける場所でもあります。いまこの場所に空間を開くことは、その変化に文化的にも、そして物理的にも関わっていくひとつの方法だと感じました。

──58 Boweryは1世紀以上の歴史を持ち、今回初めて中国系アメリカ人の所有となりました。このランドマークを商業の場ではなく文化創造の拠点として再生することには、どのような意味がありますか。歴史的な観点、あるいは個人的な観点から教えて下さい。
ワン 58 Boweryはもともと銀行として建てられた建物です。それを「アイデアのための場所」へと転換することには、静かでありながらも確かなラディカルさがあると感じています。資本を保管する場から、対話を生み出す場へと変わるわけですから。
私にとってそれは「継承」の問題でもあります。中国系アメリカ人の家族がチャイナタウンの歴史的建築を受け継ぎ、そこから文化を生み出していく——その事実に、深い意味を感じています。
──The Wang Contemporaryは、コミュニティや実験のためのプラットフォームとして位置づけられています。そのアイデンティティをどのように定義しますか。美術館に近いのでしょうか、それともカルチャーセンター、あるいはまったく新しいかたちでしょうか。
ワン 私たちはコレクターではありませんし、美術館を目指しているわけでもありません。
この空間は、あくまで「プラットフォーム」だと考えています。つねに動き続ける場です。新たな制作を委嘱し、実験を促し、プロジェクトが「恒久性」という前提に縛られることなく展開していく余白をつくること。それが重要だと思っています。
明確なカテゴリーに収まらないことを、私はむしろ歓迎しています。その曖昧さこそが、自由を生み出すからです。
──お母様は「東西を架橋すること」を自身の生きた経験として語られました。その理念はThe Wang Contemporaryのプログラムのなかでどのように具体化されていくのでしょうか。
ワン 母にとって、東西を架橋するということは抽象的な理念ではなく、人生そのものです。
私にとっては「近接性(proximity)」が鍵になります。文化のあいだを行き来することを、あえて説明しなくてもよいアーティストを紹介すること。そして、テーマとして掲げるのではなく、自然なかたちで対話が生まれる場をつくること。
「East meets West」という構図を演出するのではなく、私たちの多くがすでにその「あいだ」に生きているという現実を認めること。その延長線上に、この空間のプログラムがあると考えています。

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