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「アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦」(豊田市美術館)開幕レポート。歴史から姿を消した女性作家らの挑戦の軌跡【5/6ページ】

 吸い込まれそうな虚空を画面上に展開する赤穴桂子は、様々な素材や手法を用い、画面上で数々の挑戦を試みた。本展の準備段階で発見された未発表の作品も展覧されている。発表をしなかった時期に作家が何をし、それらがどんな意味をもったかという点についても考えてみたい。その近くには、過去に自身が作品に使用した絵の具を別の作品に再度利用するという面白い制作方法を用いた江見絹子の作品も並ぶ。

展示風景より、赤穴桂子の作品

 キャンバスの上に割ったガラスを貼り付け、さらにその上から和紙を重ねるといったエネルギッシュな作品を制作したのは白髪富士子。具体美術協会のメンバーとして有名な白髪一雄のパートナーでもある富士子は、クールな印象のなかにも力強さを感じられる作品を制作している。

展示風景より、白髪富士子《作品No.1》(1961)

 九州派の主要メンバーであった田部光子もエネルギにーに満ちた作家だ。襖に多数のピンポン玉の半球を貼り付けた作品には、口紅の跡を見つけることができる。田部自身はフェミニストの立場を掲げたわけではないが、しばしばユーモアと大胆さをもって女性性を作品に取り入れた。田部の作品に女性性の一部を見出すことで、むしろ、本展は「女性作家」を取り上げた展覧会でありながら、「女性性」を感じさせる機会が少ないことに気づく。

展示風景より、田部光子の作品

 草間彌生も本展の参加作家のひとりだ。本展の興味深いところとして、草間作品が会場の空気感に溶け込んでいるように感じる点について言及したい。この状況は、鮮烈な印象を与える力強い草間作品を空間に馴染ませるだけの力が、この時代を生き抜いたほかの作家たちの作品に備わっていることの表れではないだろうか。草間もまたこの激動の時代を駆け抜けたパワフルな作家であることは言うまでもない。

展示風景より、草間彌生《チェア》(1965)©YAYOI KUSAMA(画像転載不可)