実験工房のメンバーであった福島秀子のペインティングも紹介されている。アンフォルメルを推進した批評家であるミシェル・タピエが評価した作家でもある福島の作品には、瓶や缶など身近なものを使った円型がいくつも押されている。こうしたスタンプ的な制作方法によって、「間接的に」自分の痕跡を残すことを試みた。

今回使われている「アンチ・アクション」という言葉の「アンチ」という表現は、決して「対抗する/反対する」という意味ではなく、「アクション」とは別のやり方という意味を表す。このことより、福島の作品からうかがえる「間接的に」痕跡を残すという行為は、まさに「アンチ・アクション」だと言えるだろう。
「間接的な行為」という点では、多田美波も同じ考えを持ったひとりと言えよう。アルミを叩いてバーナーで焼くなどといった手法により造形を行った多田は、直接的な自分の痕跡を残すことを避けていた。

福島に向かい合うかたちで紹介される榎本和子は、じつは生前福島と仲が良かった作家でもある。同時代を生きたということだけでなく、実際に交流があった2人は、晩年までその関係を続けていた。そんな2人の作品を向き合わせる粋な展示構成となっており、その先には、戦前から作家として活躍をつづけた田中田鶴子の作品も紹介されている。





















