最後となる第6章「対話───『 』する風景」は、地平線・水平線の描かれた風景画/風景表現ばかりを集めている。なぜ地平線/水平線なのか。本展を担当した貴家は「すでに様式として確立しきった風景画において、なお前衛性を宿しているのが水平線/地平線だ」と語る。紙に一本の線を引いただけで、そこには風景が発生する。風景画がこの実在しない線をどのように扱ってきたのかを考えることは、次なる時代の美術を創造するうえでのヒントになり得るのでは、という問いかけが本章の背景にはある。

会場では山本森之助や三岸好太郎といった洋画家によるものから、マックス・エルンストの版画や植田正治の写真、さらにイケムラレイコやアンゼルム・キーファーらの現代美術作品まで、様々なかたちで発生している地平線/水平線を見ることができる。例えばしゃがんで頭の位置を変えるだけで、眼の前の地平線/水平線の位置は変化する。本章で投げかけられているのは絵画の未来についてであると同時に、その絵画を見る者との対話についての問いでもある。

同館の潤沢なコレクションのなかから選りすぐられた風景画で、その歴史を総覧しながら、絵画のこれまでとこれからを幅広い観点から検証した展覧会といえるだろう。



















