• HOME
  • MAGAZINE
  • NEWS
  • REPORT
  • 「これからの風景 世界と出会いなおす6のテーマ」(静岡県立美術…

「これからの風景 世界と出会いなおす6のテーマ」(静岡県立美術館)会場レポート。伝統的「風景」から現在、そして未来の絵画を思考する【6/8ページ】

 第4章「場所―名前のない風景」は、前章とは異なり、名所ではない普遍的な風景を描いた作品を取り上げる。

 西洋絵画において普遍的な風景を描いた流派としては、歴史と物語と接続した場所を離れ、パリ近郊の森に美を見出したバルビゾン派がまず挙げられるだろう。展示されているピエール=エティエンヌ= テオドール・ルソーやジャン= バティスト= カミーユ・コロー、カール・ドービニーらの作品からは、現代人の感覚とも共鳴する、普遍的な美意識が感じられるはずだ。

展示風景より、カール・ドービニー《川岸の風景》、カミーユ・コロー《メリ街道、ラ・フェルテ=ス=ジュアール付近》、テオドール・ルソー《ジュラ地方、草葺き屋根の風景》

 ロマン主義的な想像力によって、普遍的な風景に意味が与えられていたことも見逃せない。国木田独歩『武蔵野』は明治後期の武蔵野の雑木林に美を見出すとともに、そこに感傷的な感情を投影した文学作品だ。本章では国木田と同様に、近代日本において変わりゆく風景に美を見出した、中川一政、曽宮一念、栗原忠二らの作品も見ることができる。さらに北井一夫や野田哲也といった写真家は、同様の風景への眼差しを、日本の近現代の村々や住宅地に向けていった。

展示風景より、左から曽宮一念《芝浦埋立地》(1913)、栗原忠二《武蔵野》(1930年代)
展示風景より、右が野田哲也《Diary:Sept.22nd'87,in Kikkodai,Kashiwa-shi》(1987)