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アンゼルム・キーファー

Anselm Kiefer

 アンゼルム・キーファーは1945年ドイツ・ドナウエッシンゲン出身。フライブルク大学で法律を学ぶが、美術家を志して69年にカールスルーエ芸術アカデミーに入学。70年にデュッセルドルフ芸術アカデミーに移り、ヨーゼフ・ボイスに師事した。69年、ヨーロッパ各所でナチ式に敬礼する自身の姿を撮影した写真シリーズ「占拠」を発表。その後も、ナチスの無謀なイギリス侵略計画を取り上げた「あしか作戦」(1975)などの写真作品で、ドイツの歴史上の記憶を揺り起こした。80年、第39回ヴェネチア・ビエンナーレ西ドイツ館で個展を開催し、好評に終わる。この頃から、神話や宗教といった普遍的なテーマへと移行し、わらをキャンバスに付着させた絵画シリーズを制作。82年には鉛を素材に用い、物質感のある叙情的な大作を手がける。また、しばしばユダヤ系詩人パウル・ツェランの言葉を参照したほか、植物と星の運行に関係があると考えた神秘家ロバート・フラッドに捧げた作品があり、宇宙にも関心を寄せた。

 主な作品に《マルガレーテ》(1981)、《オシリスとイシス》(1986〜87)、《2つの大河に挟まれし土地(女司祭)》(1986〜88)。絵画、彫刻、インスタレーションなど多様に展開した。ウルフ賞芸術部門(1990)、高松宮殿下記念世界文化賞(1999)、ドイツ出版協会平和賞(2008)を受賞。日本では、93年に大規模回顧展「アンゼルム・キーファー展 メランコリア―知の翼」が京都国立近代美術館(セゾン美術館[東京]、広島市現代美術館を巡回)で開催された。