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「大竹伸朗展 網膜」(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館)開幕。半世紀の活動を「網膜」で振り返る【2/4ページ】

「網膜」とは何か?

 そもそも「網膜」シリーズとは何か? その始まりは1988年に遡る。大竹は露光テストに使用された後に廃棄されたポラロイド・フィルムを入手。ポラロイド・フィルムに残された光の痕跡を大きく引き伸ばし、その表面に透明の絵具としてウレタン樹脂を何層も塗布するという絵画作品のシリーズに、「網膜」の名をつけた。様々な展開を伴いながら30年にわたって制作が続けられてきた同シリーズ。本展では新作と未発表作品を含む、その全貌が概観できる。

 展示の冒頭を飾る1階エントランス。ここでは「網膜」シリーズのなかでも最初期のものであり、高さ約3メートルの大作《網膜火傷》(1990)が鑑賞者を迎える。

展示室より、大竹伸朗《網膜火傷》(1990)

 メインの展示室となる3階では、新旧の「網膜」シリーズが並ぶ圧巻の光景が広がる。

 その前半には、アトリエに30年以上保管されていたフィルムを用いて、この美術館の地下で制作された新作シリーズ12点が勢揃いする。

展示風景より、手前は《網膜/ギザ》(1989-2025)
展示風景より、手前は《網膜/グリッチ・サーフ》(1989-2024)、《網膜/幕間》(1989-2024)、《網膜/十五重塔》(1989-2024)

 後半には、91年に制作された未発表の大型作品《網膜/雹光 Ⅱ》や、スイッチや配電盤、スピーカー、照明などを組み込んだレリーフ状の最新作《網膜/六郷》(2025)、そして「網膜」シリーズから派生し、多様なメディアや形式へと展開した多様な作品が並ぶ。

 なかでも新基軸となる《網膜/六郷》は重要な作品だ。その題名は、大竹が幼少期を過ごした東京都大田区の地名に由来する。大竹は本作を前に、「幼い頃の記憶が未だに大きく影響している。つくっていくうちに、これは自分の当時の記憶を再現しているのだと気付いた」と話す。あえてスポットライトを当てない空間にポツリと展示された本作。作品が発する音や光と対峙し、大竹の過去へと思いを馳せたい。

展示風景より、《網膜/六郷》(2025)
展示風景より、左は《網膜/流星》(1990-91)
展示風景より、中央は《網膜上の青》(1990)
展示風景より、左から《網膜/雹光 Ⅰ》(1991)、《網膜/ゴースト》(1991)、《網膜/雹光 Ⅱ》(1991)

編集部