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「唐絵 中国絵画と日本中世の水墨画」(根津美術館)レポート。名品で追う「唐絵」の豊かな展開【2/7ページ】

「唐絵」の源流 宋元画

 まずは、唐絵の源流といえる宋元時代の中国絵画を確認しよう。ここには大きく南宋宮廷で描かれた院体画と、禅僧により制作された水墨画の2つの流れがある。背景には、元による南宋の滅亡にともなう僧侶の日本への亡命もあるようだ。

「『唐絵』の源流 宗元画」 展示風景より

 南宋の院体花鳥画の名品で、6代将軍・足利義教の旧蔵品、いわゆる「東山御物」の伝来を持つ《鶉図》(国宝)は、巧みに描き分けられた羽が鶉(うずら)のふっくらとした立体感をもたらし、精緻な植物との対比がみごと。こうした花鳥画は日本で非常に愛好され、のちの花鳥画の規範となる。

「『唐絵』の源流 宗元画」 展示より、伝 李安忠《鶉図》(国宝、南宋時代・12~13世紀、根津美術館蔵)

 水墨画で殊に人気が高かったのが牧谿だ。彼の光と空気を感じさせる柔らかい墨の濃淡による描法は、本国よりも日本で好まれたようで、現存作品は日本にしかないという。やはり足利将軍家に伝来した「瀟湘八景図」のうちの1図、《漁村夕照図》(国宝)は、修理後初公開。残照を三筋の靄(もや)の湿潤な空気に描き取った風景は、まさに「水墨による印象派」だ。ほかにも伝 牧谿作が並び、熱狂ぶりを伝える。

「『唐絵』の源流 宗元画」展示風景より、牧谿《漁村夕照図》(国宝、南宋時代・13世紀、根津美術館蔵)。5年ぶりの修理後初展示
「『唐絵』の源流 宗元画」展示風景より、牧谿、伝 牧谿の作品が並ぶ

編集部