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「唐絵 中国絵画と日本中世の水墨画」(根津美術館)レポート。名品で追う「唐絵」の豊かな展開【3/7ページ】

明時代の「唐絵」

 漢民族国家である明王朝と貿易を始めた室町時代には、“同時代の”文物が大量に日本にもたらされる。これらも宋元絵画と同様に日本の絵師たちの手本としてその制作に大きな影響を与えた。

「明時代の『唐絵』」 展示風景より

 中国常州(江蘇省毘陵)を中心に多く描かれ、日本では「常州(毘陵)草虫画」と呼ばれた草虫画の最優品とされる《瓜虫図》(重文)は、子孫繁栄の象徴である瓜を花と大小の実で描き、周囲に蝶や蟷螂(カマキリ)などの虫を配する。瓜の蔓が絶妙な曲線をなした美しい一作だ。

「明時代の『唐絵』」 展示風景より、呂敬甫《瓜虫図》(重要文化財、明時代・15世紀、根津美術館蔵)

 また、南宋院体画の代表的な画家・馬遠を受け継ぎながらも、明時代の浙派(せっぱ)の作と考えられる《松下人物図》には、浙派の特徴である大胆で激しい筆致に、日本の中世絵画にもたらされたものを読み取れるだろう。

「明時代の『唐絵』」展示風景より、馬遠印《松下人物図》(明時代・15~16世紀、根津美術館蔵) 

編集部