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「まだまだざわつく日本美術」(サントリー美術館)開幕レポート。作品を楽しむために重要な「心のざわめき」に注目【7/7ページ】

 最後の第6章「しゅうしゅうする」では、「収集」する者、コレクターに焦点を当てる。本章は、収集にまつわる逸話や収納箱などを通して、コレクターたちの愛と執念を詳らかにする内容となっている。

 彫刻家として知られる朝倉文夫も、じつはコレクターのひとり。朝倉が集めた日本・中国・ヨーロッパのガラスコレクションは約300件にのぼり、質量ともに国内最高峰のレベルを誇る。

展示風景より、《薩摩切子 藍色被船形鉢》、薩摩藩、一口、江戸時代 19世紀中頃、サントリー美術館蔵

 また、ある皮膚科医が集めた700件余りの《髪飾用具並びに文献類》は、かんざしなどのヘアアクセサリーのコレクション。種類や材質ごとに収納箱に綺麗に整理して保管されている。「収集する」ことに余念のないコレクターの、並々ならぬ愛が展示から感じられる。

展示風景より、《髪飾用具並びに文献類》、七〇九件のうち、江戸〜大正時代 17〜20世紀、サントリー美術館蔵

 本展の最後には、エピローグとして、同館の最初の所蔵品と最新の収蔵品が展示されている。現在約3000件の収蔵品をほこる同館は、1961年に設立された。しかし設立当初は収蔵品がゼロの状態だったという、当時にしては大変珍しいスタートとなっており、それこそまさに「ざわつく」エピソードだと学芸員の久保は言う。

展示風景より、《朱漆塗矢筈札紺糸素懸威具足》、一具、桃山時代 16〜17世紀、サントリー美術館蔵

 日本美術は、ともすれば初心者にはハードルが高く感じられる分野とも考えられる。しかし本展は、遊び心の詰まった展示方法や、英語表記の対応も含め、誰にとってもわかりやすいキャプションによって、身構えずに作品に対峙することができる展示となっている。また作品との対峙を通して自身の心とも向き合うことができ、肩肘を張らずに純粋にアートを楽しむ機会となるだろう。

編集部