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「マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート」(森美術館)開幕レポート。人間と「マシン」のあいだで美術の在処を探る【2/5ページ】

「デジタル世界のキャラクター、生命、人間や都市とのインタラクション」

 最初のセクションとなる「デジタル世界のキャラクター、生命、人間や都市とのインタラクション」の冒頭では、ウェブ上でアーティストとして活動しているビープル初の立体作品《ヒューマン・ワン》が展示されている。07年より毎日デジタル作品を制作してオンライン上で投稿するプロジェクト「エブリデイズ」を行ってきたビープルは、NFT作品がクリスティーズにおいて記録的な高値で落札されたことでも知られている。今回出展した《ヒューマン・ワン》は「回転するビデオ彫刻」であり、メタバース上に生まれた人間が変化を続けるデジタル世界を旅するという内容。ビープルは本作を生涯アップデートし続ける予定で、今回の展覧会のためにその第6章を制作したという。

展示風景より、ビープル《ヒューマン・ワン》

 佐藤瞭太郎は、インターネット上で流通し、メタバース空間などで利用されている3Dモデル、テクスチャ、アニメーションといったデータ「アセット」を素材にした映像制作を行ってきた。映像作品《アウトレット》は、安部公房をはじめとする小説に影響を受けたもので、異なる文脈を持つアセットのキャラクターたちが、同一のゲーム内で不条理な物語を繰り広げるというもの。また、平面作品「ダミーライフ」シリーズは、インターネット上に無数に散乱するセルフィーをはじめとした写真を、アセットのアバターで置き換えている。こうした無数の人格を表徴するイメージが混在する様は、人種が入り交じる現実世界とのつながりを見出さずにはいられない。

展示風景より、佐藤瞭太郎《アウトレット》
展示風景より、佐藤瞭太郎「ダミーライフ」シリーズ

 AI言語モデルに早くから関心を持ち、機械と人間の関係性を問い掛けてきたディムート。出展作品《総合的実体への3つのアプローチ》は、大規模言語モデルを取得したAI同士が挑発的なやりとりをする《エリスの林檎》、AIが人間の独り言を喋る《独り言》、そしてAIと来場者が対話をする《エル・トゥルコ/リビングシアター》の3つで構成されている。いずれも、AIの知能と人間の知能との差異がどこにあるのかを、鑑賞者に問いかける。

展示風景より、ディムート《総合的実体への3つのアプローチ》

 キム・アヨンの《デリバリー・ダンサーズ・スフィア》は、コロナ禍で注目を集めたデリバリーサービスの配達員が、都市における不可視の存在となっていることに着目した映像作品。誰にも認識されず、最短距離かつ最短時間を記載ながら、ソウルの街中をバイクで駆けるキャラクターふたりの物語となっている。会場では作品を鑑賞するだけでなく、作中の人物を立体化した作品や、実際に作品内世界をゲームとして楽しむことができる作品も置かれており、よりインタラクティブなかたちで作品の世界を感じることが可能だ。

展示風景より、キム・アヨン《デリバリー・ダンサーズ・スフィア》
展示風景より、キム・アヨン《デリバリー・ダンサーズ・スフィア》

 また、会場には谷口暁彦が「私と他者」をテーマにセレクトした、インディ・ゲームを観客がプレイできる状態で展示する「インディ・ゲームセンター」も登場。こちらもぜひプレイして楽しんでほしい。

展示風景より、「インディ・ゲームセンター」

編集部

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