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「美しい春画」展(細見美術館)レポート。国内8年ぶりの本格春画展に初公開作品も

大英博物館で開催された「SHUNGA」展(2013~14年)を機に、日本でも初の本格的な春画展が、永青文庫(東京)と細見美術館(京都)で開催されたのが2015~16年。以後、それまでタブーとされてきた春画は、絵師たちの活動のひとつとして、少しずつではあるが他の浮世絵のジャンルと並んで展示されるようになってきた。国内展の嚆矢となった細見美術館では、8年ぶりとなる「美しい春画」が開催中だ。 ※本稿では展示されている春画をそのまま掲載しています。閲覧にはご注意ください。

文・撮影=坂本裕子

展示風景より

そもそも「春画」とは?

 春画とは、一般に、人間の性愛の情景を描いた絵画で、その起源は遠く古代中国にさかのぼるという。養生術としての性交渉のあり方を説く「房中書」とその挿絵が、8世紀には日本に伝来していたらしく、これが日本の春画につながったと考えられるそうだ。性描写のある絵画は平安時代には描かれていたことが、遺された写本による春画絵巻からも類推できる。

 やがて江戸時代初期には、都市を描く洛中洛外図から人々の姿がクローズアップされ、その時代の人物、ことに美人が描かれる風俗画が生まれる。春画は、そこに生きる人間へのまなざしが萌芽した風俗画と絡みあいながら、菱川師宣らによる浮世絵の成立を経て、浮世絵師がその担い手となっていく。肉筆画に寄っていた春画は、版画という技術を得て一般庶民にも広く流布されるようになる。当時は絵師の署名もはばかられることなく、おおらかに制作されていたようだが、享保7年(1722)に江戸幕府による「好色本之類」が町触で出版禁止になると、春画は非合法の出版物とされ、絵師の署名なし、あるいは隠号(いんごう)を用いたいわゆる「アングラ出版」として、ひそかに売り買いされていく。

 アングラとはいえ市場は盛況で、おおらかで、ときにはユーモアもある表現が江戸時代には「笑い絵」(転じて「和印(わじるし)」)とも呼ばれ、貴賤を問わず、男女を問わず楽しまれた。男女の「和合」を描く春画は、子孫繁栄を重んじる結婚においては、嫁入り道具として母から娘へ、嫁へと受け継がれる縁起物でもあった。こうして肉筆、版画ともに江戸時代を通じて、春画は浮世絵師の生業のひとつとして続いていく。

編集部

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