東京・恵比寿の東京都写真美術館で、恵比寿映像祭2025「第2回コミッション・プロジェクト」のファイナリストに選出された小田香、小森はるか、永田康祐、牧原依里による新作が3月23日まで展示されている。
「コミッション・プロジェクト」とは、日本を拠点に活動する新進アーティストを選出し、制作委嘱した映像作品を本映像祭の成果として発表するという試みだ。2023年にはその第1回が行われ、荒木悠《仮面の正体 海賊盤》(2023)、金仁淑(キム・インスク)《Eye to Eye》(2023)の2作品が特別賞を受賞した。
第2回となる今回は、小森はるかによる《春、阿賀の岸辺にて》(2025)が特別賞を受賞。同作はドキュメンタリー映画『阿賀に生きる』(1992、監督:佐藤真)の発起人であり、50年間新潟水俣病の患者に向きあってきた旗野秀人に寄り添い、その土地の記憶の継承に挑んだ作品だ。
一見シンプルなドキュメンタリー映画の形式をとりつつ、さまざまな世代の人々や時代を結び付ける試みや、既制作の作品と連続性を与えるなど多面性のある制作姿勢は途方もない試みであり、かつ独創性に富むという評価を得ると共に、極めて実験的で映画館のみならず、美術館での映像展示の展開を期待したい
(プレスリリース「審査コメント」より一部抜粋)
また、小森は受賞について、プレスリリースのなかで次のようにコメントを寄せている。
特別賞をいただき、ありがとうございます。
撮影を始めてから10年近く経ってしまい、外に出すことへ怖気づく気持ちの方が大きくなっていた作品ですが、ファイナリストに選んでいただき、今回発表できたことを感謝いたします。審査委員のみなさんから"途方もない試み"という評価の言葉を贈っていただいたことを、しっかりと受け止めます。またファイナリストである牧原依里さん、小田香さん、永田康祐さんの新作と共に発表する機会を得られたのは、最も刺激的で幸運なことでした。関係性の中で生まれていく「記録」に終わりはないのだと勇気づけられました。
そして、ここまで付き合い続けてくださった旗野秀人さん、撮影から展示・上映にいたるまでに協力してくださったすべてのみなさんに、深く感謝しています。
(プレスリリース「受賞者コメント」より抜粋)
審査委員を務めたのは、沖啓介(メディア・アーティスト)、斉藤綾子(映画研究者、明治学院大学教授)、レオナルド・バルトロメウス(山口情報芸術センター[YCAM]、Gudskul Ekosistemキュレーター)、メー・アーダードン・インカワニット(映画・メディア研究者、キュレーター、ウェストミンスター大学教授)、田坂博子(東京都写真美術館学芸員、恵比寿映像祭キュレーター)。
「恵比寿映像祭2025」の会場レポートや「第2回コミッション・プロジェクト」のファイナリストによる作品の詳細はこちら。
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