2023.4.1

政府の観光立国推進基本計画、アートで「グローバル拠点の形成」狙う

3月31日に閣議決定された観光立国推進基本計画。そのなかではアートに関連する計画も無視できない。注目すべきポイントをまとめた。

文=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)

「アート・バーゼル香港2023」の様子

 政府が3月31日に閣議決定した「観光立国推進基本計画」。持続可能な観光地域づくり戦略、インバウンド回復戦略、国内交流拡大戦略の3つを柱に据え、訪日外国人旅行の消費額5兆円などを目標に掲げるこの計画では、アート関連の項目にも注目したい。

 政府は文化観光推進のため、美術館・博物館については夜間開館を推進。また多言語対応や通信環境を整備することよって、国内外の訪問者が「言語・年齢・障害の有無に関係なく芸術鑑賞・創造活動ができる環境」を構築するという。加えて、令和4年度に改正された博物館法に基づき、地域博物館が観光の中核的な役割を果たすことも求めている。

 コンテンツ面では、2020年東京五輪の際に展開された「日本博」を引き継ぐかたちで「日本博2.0」を推進させ、日本の文化芸術の多様性を世界に示す取組を展開するとしている。

 また注目したいのが、アートの国際拠点化として言及されている「世界のアートカレンダーに認知される国際アートイベント(世界的なアートフェア等)の国内開催」だ。

 世界的に知られるアートフェアとしては、バーゼルやマイアミ、香港で展開される「アート・バーゼル」や、ロンドンやニューヨーク、ソウルで展開される「フリーズ」があるが、現時点で日本国内にはこれらと同レベルのブランド力を有するアートフェアはない。今年7月には国際水準のアートフェアとして「TOKYO GENDAI」が初開催予定だが、政府がどのレベルの国際アートイベントをイメージしているのかは不透明だ。

 基本計画のなかでは、令和7年度までに「我が国のアートの国際的な拠点としての地位の確立を図る」とまで明記されている。アジア各国がアート振興に注力するなか、文化庁を京都移転させた日本政府の舵取りに注目が集まる。