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政府が改正目指す博物館法。登録インセンティブや学芸員の処遇改善など課題積み残し

2月22日に閣議決定された博物館法の改正案。博物館への登録要件を緩和するこの改正案について、衆議院の文部科学委員会で23日、3時間に渡る審議が行われた。

文部科学省

 今年2月22日に閣議決定された博物館法の改正案。博物館への登録要件を緩和するこの改正案について、衆議院文部科学委員会で23日、3時間に渡る審議が行われ、全会一致で原案通りの可決となった。

 博物館には登録博物館、博物館相当施設、博物館類似施設の区分があり、2018年時点では登録博物館(914)、博物館相当施設(372)、博物館類似施設(4452)となっており、約8割が博物館法の対象外だ。これまで博物館法では登録要件が地方公共団体や一般社団法人、財団法人などに限定されていたが、今回の法改正ではこれを緩和。法人類型に関わらず登録ができるようになり、登録を促す狙いがある。

>>博物館学の専門家による解説はこちら

 この日、質疑に立ったのは尾身朝子議員(自由民主党)、浮島智子議員(公明党)、菊田真紀子議員(立憲民主党・無所属)、荒井優議員(立憲民主党・無所属)、岬麻紀議員(日本維新の会)、西岡秀子議員(国民民主党・無所属クラブ)、宮本岳志議員(日本共産党)。

 質疑では今回の法改正の狙いに焦点が当てられた。各党からの質問に対し、国は「博物館に求められる役割や機能が多様化・高度化していること」や「企業立のミュージアムの増加」などを踏まえ「登録博物館の要件が時代にそぐわなくなってきている」と説明。登録博物館となることのメリットについては、社会的地位の向上などを強調するいっぽうで、具体的なインセンティブについては不明瞭だ。

 この法改正により、博物館は社会教育施設としての機能だけでなく、文化観光を担うことも求められる。博物館は博物館法において「原則無料」が謳われているが、登録博物館になることで料金の値上げなどが行われることが懸念される。こうした懸念に対し、末松文部科学大臣は「公立博物館の運営の方向性は事情を踏まえて設置者が適切に判断すべきだが、一般論として考えれば利用しやすい料金が好ましい」としたうえで、「料金引き上げや特定の開発を促進する考えはまったくない」と明言した。

 この日の審議では、博物館法の範囲外である国立博物館を含む枠組みの整備の必要性も指摘されたが、もっとも注目すべきは学芸員に関するやりとりだ。当初、今回の博物館法改正には学芸員制度の改正も盛り込まれる予定だったが、結果としてこれは先送りされることとなった。

 日本の博物館では常勤職員が減少傾向にあるいっぽうで、非常勤職員が増加。職員不足の館が73.2パーセントにおよび、職員も単年度雇用が多く、不安定な雇用の問題は「喫緊の課題」(菊田議員)だ。また宮本議員は現行の登録博物館でも学芸員ゼロの館が3割におよぶ状況を挙げ、今後5年間の登録移行期間において、こうした館の学芸員採用を支援する必要性も訴えた。

 こうした学芸員問題に対し、国は「処遇改善の機運を上げることが重要」とはしたものの、具体的な内容については引き続き検討していくと答弁するにとどまっている。

 なお、この審議では付帯決議がなされ、博物館の社会教育施設としての役割を尊重し、過度に利益を求めない非営利性に配慮し、公益性・公共性の確保に留意することや、専門的職員の雇用の安定など処遇の改善、館長への学芸員の登用などの環境整備、登録博物館の財政上の措置の拡充や税制優遇などが盛り込まれた。博物館法の改正案は、成立すれば2023年4月1日に施行される。

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