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いま、韓国のアートマーケットが熱い。そのブームが示唆するものとは?

今年、欧米の有力なギャラリーが次々とソウルにスペースをオープンし、「フリーズ」も来年9月にソウルで新たなアートフェアを開催することを発表するなど、韓国の美術市場はいま大きな注目を集めている。韓国の市場ブームの要因や、それが日本に与える影響とは?

文=王崇橋(ウェブ版「美術手帖」編集部)

ケーニッヒ・ソウル屋上庭園の展示風景より Photo by Cunho An. Courtesy of the artists and KÖNIG GALERIE Berlin/London/Seoul

 韓国美術市場を分析するウェブサイト「K-ART MARKET」の調査によると、2018年の韓国美術市場の規模は約4200億ウォン(約415億円)で、一般社団法人アート東京が発表したデータと比較してその規模が同年の日本美術市場の約6分の1であることがわかる。しかしながら、今年に入ってからは欧米の有力なギャラリーが次々とソウルにスペースをオープンし、イギリスを代表するアートフェア「フリーズ」も来年9月にソウルで新たなアートフェアを開催することを発表するなど、ソウルはアジアにおける新たなアートハブになりつつあり、大きな注目を集めている。

 欧米のギャラリーが韓国に進出する理由や韓国美術市場の強み、そして日本が世界の美術市場における競争力を高めるためにとるべき措置について、関係者に話を聞いた。

活発で成長し続ける韓国の美術市場 

 2019年11月に銀座の「MCM GINZA HAUS I」にテンポラリー・スペースをオープンしたドイツのケーニッヒ・ギャラリーは、昨年末に入居ビルの取り壊しに伴ってこのスペースを閉鎖し、今年4月にMCMとともにソウルの江南(カンナム)地区に新しい展示スペースをオープンした。

 同ギャラリーの東京とソウルのスペースは、ともにMCMとのコラボレーションの一部であり、ギャラリーの設立者であるヨハン・ケーニッヒは、MCM銀座店の閉店によってスペースをソウルに移すことは自然なことであるとしつつ、韓国美術市場は「現代美術の成長曲線上にあり、ダイナミックなエネルギーとトレンドへの迅速な適応力を持っている」と語る。

 今年10月にソウルの漢南洞(ハンナムドン)地区に新しいスペースをオープンするメガギャラリー、タデウス・ロパックは、07年より韓国人アーティストのイ・ブルの取り扱いを始めるとともに、韓国の美術館で取り扱いアーティストの展覧会の開催に協力することによって、地元のコレクターや美術機関と強固な関係を築いてきた。 

タデウス・ロパックのソウルスペースの外観 Courtesy of Thaddaeus Ropac

 ロパックは、「ソウルは、豊かで独特な文化的歴史を持ち、現在活躍している地元のアーティストだけでなく、強力な制度的基盤と高い関心を持つ観客によって、マーケットが活発になっている。タデウス・ロパックはこの10年でアジアにおける活動に注力しており、アジアに拠点を設けることは自然な流れだ」と述べている。

 韓国の美術市場にとってブースターとなったのは、2016年にペロタンがソウルに進出したことだった。フランス・パリを本拠地に、ニューヨーク、香港、東京など世界各国にスペースを持つ同ギャラリーのパートナー兼ディレクターであるアリス・ロングは、「韓国のアートマーケットは、ほかの多くのアジアのマーケットに先駆けて開発されており、私たちは長年にわたり、ソウルで経験豊富なコレクターや既存の美術機関にネットワークを広げることができた」とコメント。市場が成熟し、クリエイティブ・ハブとしての大きな可能性を秘めていることが、欧米ギャラリーの進出につながっているとする。

強い制度的基盤から生まれる市場のブーム

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