首都から離れて。文化庁の京都移転は「是」なのか

3月27日、日本の文化政策を担う文化庁が京都に移転。新たなスタートを切った。首都・東京から京都へと文化庁が移転することは何を意味するのか。いま、改めて考えたい。

文=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)

京都にある文化庁の新庁舎

「文化政策」とは言えない移転。文化政策軽視の表れ

 現在も使われている警察本部庁舎としては日本最古の京都府警旧本部本館。1928年に京都で行われた昭和天皇の「即位の礼」に合わせて建設された歴史的建造物だ。これに新行政棟を加えたものが、3月27日から新たな文化庁の「住まい」となる(本格稼働は5月15日から)。

 そもそも文化庁はなぜ移転するのか? 移転が決定したのは安倍政権時代の2016年3月のことだ。第1次安倍内閣では文科大臣を務めた京都を地盤とする文京族、伊吹文明元衆議院議員が移転を牽引。馳浩文科大臣(移転決定当時)の協力もあり、東京一極集中からの脱却を狙った「地方創生」の波に乗って移転を実らせた。

 この移転は京都から大いに歓迎されており、京都市は公式サイトのなかで「明治以来初の中央省庁の移転」であり、京都にとっては「名実ともに『文化首都』となる画期的な出来事」「都市の魅力や国内外への発信力を一層高める」と強調。「京都の都市としての価値向上や将来の発展のために大きな意義」があるとしている。

 しかし文化政策に詳しい専門家によると、この文化庁移転は「そもそも文化政策の範囲外のものだ」と手厳しい。

 「中央省庁のなかでも全面的に移転するのは文化庁だけ。各省庁が移転に手を挙げないなかで、この状況は国会において文化庁が重要視されていない証拠でしかない」(専門家)。

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