「ギャラリー」ではなく「アートセンター」
観光客で賑わう奈良市の三条通り。ここに、現代美術に特化した新たなアートスペース「MOMENT Contemporary Art Center」が2月1日にオープンした。
同スペースが位置するのは、JR奈良駅から興福寺や春日大社などに向かう目抜き通り。観光客が行き交う通りに面するビルの1階という好立地だ。
運営を担うのは、MUZ ART PRODUCEと一般財団法人森記念製造技術研究財団。ディレクターはアート・プロデューサーであり、MUZ ART PRODUCE 代表のカルドネル島井佐枝。
カルドネル自身は京都教育大学で日本画を学び、写真や映像作家としても活動した経歴を持つ。その後は、関西圏の美術教育の現場や京都国際フランス学園の運営に携わりながら、「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」立ち上げの実⾏委員として「KG+」を担当し(2012〜14)、同フェスティバルの共同ディレクターも長年務めた(2014〜20)。並行して、コマーシャルギャラリー勤務、アンスティチュ・フランセ日本が運営するアーティスト・イン・レジデンス「ヴィラ九条山」の運営にも関わってきたほか、2019年からは関西日仏学館と京都市が主催する現代アートの祭典「ニュイ・ブランシュKYOTO」のプロデュースを担ってきた。また「MIMOZA WAYS」日仏演劇プロジェクトや「京都文学レジデンシー」の実行委員も歴任。コロナ禍を機に、「FOTOZOFIO」「ARTAOTA」「Red Line」など、シニア世代や学生、女性のアーティストの各コミュニティづくりにも力を入れている。そして、24年からは森記念製造技術研究財団地域・⽂化⽀援事業委託研究員としての活動も行っており、それが今回のスペースオープンへとつながった。
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大阪生まれのカルドネルは、奈良でも教鞭をとるなどこの地域に親しんできた。奈良国立博物館や正倉院など、長い歴史を持つ日本美術をいまに紡ぐ奈良だが、2005年から活動を続けるギャラリー「Gallery OUT of PLACE」や2011年から回を重ねる「奈良・町家の芸術祭はならぁと」、2015年からの「学園前アートフェスタ」など、現代美術の土壌もある。
こうしたなか誕生した「MOMENT Contemporary Art Center」は、「日常生活に何かインパクトのある非日常的な瞬間(moment)を生み出したい」という思いから命名された。その名前にあるように、コマーシャルな「ギャラリー」ではなく、「アートセンター」を掲げていることもキーポイントだ。
「ギャラリーという名称では、できることが限られてしまいます。そうではなく、小さなスペースではありますが広範囲なプログラムを展開したかった。だからアートセンターという名前をつけたのです」(カルドネル)。
そのプログラムの大きな柱が、作品の展示・販売、アーティスト・イン・レジデンス、そしてレクチャーなどのプログラムだ。
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