政府が注力する「日本博」とは何か? 「日本人と自然」テーマに369プロジェクトを全国で展開

日本政府が2015年の「『日本の美』総合プロジェクト懇談会」から実施に向けて進めてきた「日本博」が、オリンピックイヤーの今年、幕を開ける。「日本人と自然」を総合テーマにしたこのプロジェクトの内容とは?

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックを契機に、「日本の美」を体現する美術展・舞台芸術公演などを「縄文から現代」および「日本人と自然」というコンセプトのもと、日本全国で展開する──これが、政府が今年注力する「日本博」だ。この記者会見が1月15日、虎ノ門ヒルズで行われた。

 日本博の経緯は2015年にさかのぼる。政府は同年、「『日本の美』総合プロジェクト懇談会」(当時の座長は故津川雅彦)を発足。18年に行われた第6回懇親会において、「日本博」の開催を文部科学省および文化庁に指示した。

 その後、政府は18年にはフランスにおいて「ジャポニスム2018」を、19年にはアメリカで「Japan2019」を開催。「日本の美」をまずは海外にアピールしてきた。

ジャポニスム2018より、「深みへー日本の美意識を求めてー」展の会場風景。中央は田中一村《不喰芋と蘇鐵》 © 2018 Hiroshi Niiyama

 そして今年、本番となる日本博が日本全国の文化施設を中心に展開される。

 総合テーマに掲げるのは「日本人と自然」。基本コンセプトは「縄文時代から現代まで続く『日本の美』を国内外に発信し、次世代に伝えることでさらなる未来を創生する」となっている。

 政府が日本博に期待するのは、「文化による国家ブランディングの強化」「文化による観光インバウンド拡充、訪日外国人の地方への誘客の促進」「文化芸術立国としての基盤強化」の3点だ。日本博には19年度で34.6億円、20年度で45.3億円(案)の予算が組まれており、萩生田光一文科大臣は「歴史に残るものにしたい」と期待を寄せる。

記者会見には、日本博広報大使に就任した黒柳徹子(中央)と、萩生田光一文部科学大臣、河村潤子日本芸術文化振興会理事長が登壇した

 日本博では、プロジェクトを大きく「主催・共催型」「公募助成型」「参画型」の3つに分類。 「主催・共催型」は国と地方自治体、文化施設が共同で企画・実施する日本博の中核となる大型プロジェクトで、「法隆寺金堂壁画と百済観音」(東京国立博物館)、「隈研吾展」(東京国立近代美術館)、「ファッション イン ジャパン 1945-2020」(国立新美術館)、「古典×現代2020」(同)など、69件が採択されている。

 「公募助成型」は、各地域や団体の特色ある企画を公募し、事業費の一部を助成するもので、「メディアアンビショントウキョウ2020」など68件が採択。助成は行わず、企画内容の認定のみを行う「参画型」は、もっとも多い232件が認証された。

 このように政府が注力する日本博だが、課題もある。文化庁は日本博関連の 「日本博を契機とする文化資源コンテンツ創成事業」(19年度)において、助成予定だった「あいちトリエンナーレ2019」への補助金全額を不交付としており、愛知県は文化庁に対し不服申し立てを行う姿勢を示している。

 また日本博事務局を務める芸術文化振興会をめぐっては、映画『宮本から君へ』への助成金不交付について、制作サイドが芸文振を提訴する事態ともなっている。

 「文化芸術立国としての基盤強化」を謳う日本博だからこそ、このような問題を解決することが先決だと言えるだろう。

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