空間を可視化する「霧の彫刻」
中谷にとって霧は、普段は目に見えない空気の動きや空間そのものを可視化するための素材だ。人工的に生成された霧は、高圧ポンプと特殊なノズルによって20〜30ミクロン程度の微細な水滴を発生させることで生み出される。その粒径は自然界の霧とほぼ同じであり、中谷は長年にわたり「人工的な手法によって自然の霧を再現する」試みを続けてきた。
また中谷は、自身の作品を「風との対話」と表現している。霧の彫刻は固定されたオブジェではなく、風や湿度、人の移動といった環境条件によって絶えず変化する体験として存在する。《Cloud #07156》というタイトルに含まれる数字も、ブルス・ドゥ・コメルス近郊の気象観測所のコードに由来しており、作品が特定の場所と結びついていることを示している。

本作は、安藤忠雄によるコンクリートの円筒建築とも対話を試みる。安藤は建築を「自然と人間がせめぎ合いながら共存する場」と捉えてきたが、中谷の霧はその空間に一時的な不透明性をもたらし、建築が本来持つ光や時間の変化を強調する役割を果たす。ロトンド中央に立ち上がる霧は、視界を遮りながらも新たな知覚体験を生み出し、建築と自然現象の関係をあらためて問いかける。
会期中には、中谷と美術史家アンヌ=マリー・デュゲによるトークイベントのほか、霧の空間を体験するワークショップやコンサート、映像上映など関連プログラムも多数開催される予定だ。

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