2022.1.27

Chim↑Pom初の本格的回顧展。森美術館で「ハッピースプリング」展開催へ

独創的なアイデアと行動力によって常に注目を集めてきたアーティスト・コレクティブ「Chim↑Pom(チンポム)」。その初めてとなる本格的な回顧展「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」が森美術館で開催される。会期は2月18日〜5月29日。

Chim↑Pom 撮影=山口聖巴
前へ
次へ

 他に類を見ないアイデアと行動力で社会に介入し、意表を突く数々のプロジェクトを手がけてきたアーティスト・コレクティブ「Chim↑Pom(チンポム)」。その初となる本格的な回顧展が、東京・六本木の森美術館で開催される。会期は2月18日~5月29日。

Chim↑Pom ビルバーガー 2018 ミクストメディア(にんげんレストランのビルから切り出された3階分のフロアの床、各階の残留物) 400×360×280 cm(左)、186×170×155 cm(右) 素材提供:にんげんレストラン、Smappa! Group、古藤寛也 個人蔵(左) Courtesy: ANOMALY(東京) 展示風景:「グランドオープン」ANOMALY(東京)2018年 撮影=森田兼次

 Chim↑Pomは2005年に東京で結成。メンバーは卯城竜太、林靖高、エリイ、岡田将孝、稲岡求、水野俊紀の6名からなる。世界各地の展覧会に参加するだけでなく、自発的に様々なプロジェクトを企画しており、15年にはアーティストランスペース「Garter」を東京・高円寺にオープン。翌16年には新宿・歌舞伎町で「また明日も観てくれるかな?」を開催し、大きな話題を集めた。また、東京電力福島第一原子力発電所事故による帰還困難区域内で、封鎖が解除されるまで観に行くことができない国際展「Don’t Follow the Wind」(15年3月11日〜)の発案と立ち上げを行い、作家としても参加。同年、プルデンシャル・アイ・アワードで大賞を受賞した。

Chim↑Pom ブラック・オブ・デス 2008 ラムダプリント、ビデオ 写真:81×117.5 cm、ビデオ:9分13秒 Courtesy:ANOMALY and MUJIN-TO Production(東京)

 Chim↑Pomが主題とするのは、都市、消費主義、飽食と貧困、日本社会、原爆、震災、スター像、メディア、境界、公共性など多岐にわたり、現代社会の事象や諸問題に対するメッセージ性の強い作品ながら、その多くにはユーモアや皮肉が感じられる。また、コロナ禍において顕在化している、感染症や疫病患者に対する差別や偏見、汚染や境界といった社会問題について、それらを予見するかのようにこれまでの作品のなかで取り上げている。

Chim↑Pom 酔いどれパンデミック 2019-2020 個人蔵 委託制作:Manchester International Festival and Contact, 2019 企画:Contact Young Curators Courtesy:ANOMALY and MUJIN-TO Production(東京) 撮影=Michael Pollard

 本展は、結成17周年を迎えるChim↑Pomの、初期から近年までの代表作と本展のための新作を一堂に展示するもの。「サンキューセレブプロジェクト アイムボカン」(2007)など初期の代表作から、《ヒロシマの空をピカッとさせる》(2009)、《LEVEL 7 feat.『明日の神話』》(2011)、「ビルバーガー」シリーズ(2016/2018)などの大型作品から、小作品、参加型・体験型作品などまでが網羅的に紹介されるという。

Chim↑Pom ヒロシマの空をピカッとさせる 2009 ラムダプリント、ビデオ
写真:66.7×100 cm、ビデオ:5分35秒 Courtesy:ANOMALY and MUJIN-TO Production(東京) 撮影=Cactus Nakao
Chim↑Pom LEVEL 7 feat.『明日の神話』 2011 アクリル絵具、紙、塩化ビニール板、ビデオ、ほか 絵画:84×200 cm、ビデオ:6分35秒 所蔵:岡本太郎記念館(東京) Courtesy:ANOMALY and MUJIN-TO Production(東京)

 会場は、「都市と公共性」「肉体」「境界」「ヒロシマ」「東日本大震災」「May, 2020, Tokyo」「エリイ」などのテーマで構成され、Chim↑Pomが一貫して考察する事象を浮き彫りにしつつ、活動の全貌を検証する。

 また、2020年のエリイの出産を機に構想されたインスタレーションのほか、森美術館に託児所をつくる「くらいんぐみゅーじあむ」などの新作も発表される。今年もっとも注目したい展覧会のひとつだ。

Chim↑Pom 道 2017- 2018 オンサイト・インスタレーション サイズ可変 Courtesy:ANOMALY and MUJIN-TO Production(東京) 展示風景:「アジア・アート・ビエンナーレ2017」国立台湾美術館(台中)2017- 2018 撮影=前田ユキ
Chim↑Pom 狐狗狸刺青(こっくりさんタトゥー) 2008 ラムダプリント 83×52 cm Courtesy:ANOMALY and MUJIN-TO Production(東京)
Chim↑Pom USAビジターセンター(「ジ・アザ―・サイド」プロジェクトより) 2017 ジークレープリント 66×100 cm Courtesy:ANOMALY and MUJIN-TO Production(東京) 撮影=松田修
Chim↑Pom May, 2020, Tokyo(へいらっしゃい)―青写真を描く― 2020 サイアノタイププリント、ゼラチン、キャンバス、鉄フレーム 175.5×352.3×4.5 cm 所蔵:高橋龍太郎コレクション(東京) Courtesy:ANOMALY and MUJIN-TO Production(東京) 制作風景:東京、新宿
Chim↑Pom スピーチ(「サンキューセレブプロジェクト アイムボカン」より) 2007 ビデオ
1分53秒 Courtesy:ANOMALY and MUJIN-TO Production(東京)
「くらいんぐみゅーじあむ」イメージ