人間の才能 生みだすことと生きること(滋賀県立美術館、1月22日〜3月27日)
2021年6月にリニューアルオープンした滋賀県立美術館。そのディレクター(館長)として就任した保坂健二朗が担当する展覧会が「人間の才能 生みだすことと生きること」だ。
本展で紹介する作家のほとんどは、プロのアーティストではない。誰かに評価されることなど望まず、独自の方法論で制作する彼らの作品からは、「生みだすことと生きること」を接続させていくことの大切さを感じ取れるという。
ヴェネチア・ビエンナーレでも紹介された澤田真一、百鬼夜行的イメージを描く鵜飼結一朗、空想の本やDVDのジャケットをデザインする上土橋勇樹、記憶に基づきたおやかなイメージを紡ぎ出す澤井玲衣子など、全17作家を紹介する。
「Hello! Super Collection 超コレクション展 ―99のものがたり―」(大阪中之島美術館、2月2日〜3月21日)
1983年に美術館構想が発表されてから約40年、2022年2月2日についに大阪中之島美術館が開館する。そのオープニングを飾る展覧会が「Hello! Super Collection 超コレクション展 ―99のものがたり―」だ。
同館がこれまでコレクションしてきた6000点以上の作品のなかから400点の代表的な作品を選出。マリー・ローランサン、佐伯祐三、アメデオ・モディリアーニ、ルネ・マグリット、アルベルト・ジャコメッティ、ジャン=ミシェル・バスキアなどを一堂に公開する。
また、展覧会では来館者がコレクションに親しみを持てるよう、作品にまつわる99のものがたりもあわせて紹介。新美術館の根幹をかたちづくるコレクションを収集方針とともに知ることができそうな開館記念展だ。
「ミロ展―日本を夢みて」(Bunkamura ザ・ミュージアム、2月11日〜4月17日)
ジョアン・ミロ(1893〜1983)の国内では20年ぶりとなる大規模な回顧展「ミロ展―日本を夢みて」が、東京・渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで開催される。
ミロは1893年、スペイン・バルセロナ生まれ。故郷の風土に根ざした作品を制作するいっぽう、1920年からはパリに出てアンドレ・ブルトンと親交を結び、シュルレアリスムの運動に参加。大戦中は戦禍を避けて各地を転々としながら制作を続け、1944年に陶芸と彫刻の制作を開始。1956年にマジョルカ島のパルマにアトリエを構え、彫刻、陶芸、壁画、版画、詩と多彩な芸術活動を行った。
ミロと日本との関係に焦点を当てることも本展の特徴だ。ミロの若き日の日本への憧れを象徴する初期作品から代表作を展示し、ミロと日本の関係に迫る。また、本人のアトリエにあった日本の民芸品や、批評家の瀧口修造との交流を示す多彩な資料を通してミロと日本のつながりをひも解く。
「 Chim↑Pom展:ハッピースプリング 」(森美術館、2月18日〜5月29日)
結成17周年を迎えるアーティスト・コレクティブ、Chim↑Pomの初の本格的回顧展が森美術館で開催される。独創的なアイデアと卓越した行動力で、社会に介入し、人々の意表を突く数々のプロジェクトを手掛けてきたChim↑Pom。作品の主題は都市、消費主義、飽食と貧困、日本社会、原爆、震災、スター像、メディア、境界、公共性など多岐にわたり、現代社会の事象や諸問題に対する強いメッセージ性を持ちながらも、その多くの作品にはユーモアや皮肉が込められている。
展示は、都市と公共性、広島、東日本大震災などのテーマに則して構成され、作家が一貫して考察する事象を浮き彫りにしつつ、活動の全貌を検証。いっぽうで、創意工夫に富んだダイナミックな展示構成により、作品に新たな光を当てることを試みるという。
特別展「空也上人と六波羅蜜寺」(東京国立博物館、3月1日〜5月8日)
鎌倉時代の僧・空也上人の立像をはじめ、平安から鎌倉時代の彫刻の名品を紹介する特別展「空也上人と六波羅蜜寺」が東京国立博物館で開催される。
「市聖(いちのひじり)」「阿弥陀聖(あみだひじり)」と称され、平安時代に「南無阿弥陀仏」と唱えて極楽往生を願う阿弥陀信奉をいち早く広めた僧・空也上人。この空也上人の没後1050年となる2022年に、重要文化財となる康勝作《空也上人像》(13世紀)やゆかりの品々、そして平安から鎌倉にかけての仏教彫刻を紹介するのが特別展「空也上人と六波羅蜜寺」だ。
展覧会は2部構成で、第1部「空也上人と六波羅蜜寺の創建」では、世の平安を祈って《十一面観世音菩薩立像》を造像し、現在の六波羅蜜寺にあたる再光寺を創建した空也上人の足跡を、寺創建時の像とともに紹介。第2部「六波羅とゆかりの人々」は、「あの世」と「この世」の境界に位置する寺として、人々の信仰を集めてきた六波羅蜜寺のゆかりの品を展示する。
「ダミアン・ハースト 桜」展(国立新美術館、3月2日〜5月23日)
イギリスを代表するアーティスト、ダミアン・ハースト。その日本初となる大規模個展「ダミアン・ハースト 桜」展が開催される。
ダミアン・ハーストは1965年イギリス・ブリストル生まれ。1988年のゴールドスミス・カレッジ在学中に「フリーズ」展を主催し、大きな衝撃を与えるととももに、「ヤング・ブリティッシュ・アーティスト(YBAs)」の誕生を示すきっかけとなった。
本展は、19世紀のポスト印象派や20世紀のアクション・ペインティングなどを独自に解釈した最新シリーズ「桜」を展覧する。大きいもので縦5メートル、横7メートルを超える画面に描かれた桜。本展では、107点の同シリーズからハースト自身が作品を選び、展示空間を構成するという。
「森村泰昌:ワタシの迷宮劇場」(京都市京セラ美術館、3月12日〜6月5日)
京都市京セラ美術館が、開館1周年記念展のひとつとして、日本を代表する現代美術家のひとりである森村泰昌の個展「森村泰昌:ワタシの迷宮劇場」を開催する。
森村泰昌は1951年大阪市生まれ。1970年代に京都市立芸術大学で学び、85年にゴッホに扮したセルフポートレート写真でデビュー。美術史における名画の登場人物や歴史上の人物、女優に扮するセルフポートレートを制作することで、ジェンダーや人種を含んだ個人のアイデンティティの多重性を視覚化し、個人史と歴史の交錯点を表現してきた。
本展では、これまでほとんど発表されることのなかった、1984年から撮りためている秘蔵のインスタント写真約800点を一堂に展示。森村にとって私的空間で行われる儀式の痕跡のようなインスタント写真を通じ、35年にわたる活動のバックグラウンドを浮かび上がらせる。また、会場構成を担当するのは、青木淳とともに京都市京セラ美術館の大規模リニューアルプロジェクトを手がけた西澤徹夫。新館東山キューブを「迷宮劇場」へと変貌させるという。
「没後50年 鏑木清方展」(東京国立近代美術館、3月18日〜5月8日)
明治から昭和にかけて、江戸の情緒香る美人風俗を描いた挿絵画家・日本画家、鏑木清方(1878〜1972)。その没後50年を記念した大規模回顧展が「没後50年 鏑木清方展」だ。同展は5月27日〜7月10日の期間で京都国立近代美術館に巡回する。
鏑木清方は13歳で歌川国芳の孫弟子に当たる浮世絵師・日本画家の水野年方に入門し、挿絵画家を目指した。1901年には紫紅会の仲間と烏合会を結成し、同会で《一葉女史の墓》(1902)など文学作品に取材した作品を発表。1925年には第6回帝展に《朝涼》を無鑑査出品し、翌々年の第8回帝展では《築地明石町》で帝国美術院賞を受賞するなど高い評価を得ていた。
東京国立近代美術館では、清方の代表作として知られながら1975年以来所在不明であった《築地明石町》(1927)と、あわせて三部作となる《新富町》《浜町河岸》(ともに1930)の3点を2019年に収蔵。この三部作を、会期中展示替えなしで見ることができる。
「生誕100年 特撮美術監督 井上泰幸展」(東京都現代美術館、3月19日〜6月19日)
日本の映像史に重要な位置を占める「特撮(特殊撮影の略称)」。その領域において、大きな足跡を遺した特撮美術監督・井上泰幸(1922〜2012)の個展が開催される。
井上は特撮のパイオニアである円谷英二(1901〜1970)のもと、「ゴジラ」(1954)から特撮美術スタッフの一員としてそのキャリアを本格的にスタートさせた。以降、デザイナー/美術監督として、特撮映画のみならず日本の映画・テレビ史において重要な作品を数多く手がけ、映像文化を支えた。
井上の遺したスケッチ、デザイン画、絵コンテをはじめ、記録写真や資料、撮影で使用したミニチュアやプロップ、当時を再現した大型撮影セットなどを展示。体験型展示や、アーカイブ調査で発見された貴重な初期資料も公開予定となっている。それらを通して作家の功績と日本の特撮映像史を俯瞰し、次世代への創造的なインスピレーションを喚起することを目指す。
開館記念特別展「モディリアーニ ―愛と創作に捧げた35年―」(大阪中之島美術館、4⽉9⽇~7⽉18⽇)
2022年2月2日にオープンする大阪中之島美術館。その開館記念展のひとつとして、アメデオ・モディリアーニ(1884~1920)の軌跡をたどる展覧会が開催される。
エコール・ド・パリの一員としてピカソや藤田嗣治らとともに活躍したモディリアーニは、アーモンド型の眼や細長い首を持つ人物像で知られ、35歳で早世するまで精力的に描いた作品群は世界中で愛されている。
本展は国内外のモディリアーニ作品を中心に、同時代のパリを拠点に繰り広げられた新しい動向や多様な芸術の土壌を示し、その芸術が成立する軌跡をたどるものだ。
「池田亮司展」(弘前れんが倉庫美術館、4月16日〜8月28日)
作曲家/アーティストとして国際的に広く知られる池田亮司の個展が弘前れんが倉庫美術館で開催される。
池田亮司は1966年岐阜県生まれ。現在はパリおよび京都を拠点にしている。電子音楽の作曲を起点としつつ、体験としてのアートを提示する池田は、物質や物理現象、数学的概念など様々な要素を精緻に構成し、鑑賞者を包み込むようなパフォーマンス、インスタレーションを多数発表してきた。
日本では2009年の東京都現代美術館以来の大規模個展となる本展では、新作を含む近年の活動を展覧。2000年以降、データを主題にしてきた作品が並ぶ。弘前れんが倉庫美術館の大きな特徴である高さ15メートルの巨大な吹き抜け空間ではプロジェクションが行われるほか、各展示室の映像や音響が結びつき、建築空間と作品が共鳴/共振するような構成になるという。
「スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち」(東京都美術館、4月22日〜7月3日)
世界でも指折りの西洋絵画コレクションを有するスコットランド国立美術館。その名画を紹介する展覧会が東京都美術館で開催される「スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち」だ。
スコットランド国立美術館は、1859年の開館以来、コレクションの拡充を続けてきた。現在では、ラファエロ、エル・グレコ、ベラスケス、レンブラント、ブーシェ、スーラ、ルノワールなど、ルネサンス期から19世紀後半にいたるまでの西洋絵画史に名を刻んだ巨匠の作品を所蔵している。
本展ではこれら巨匠の名画の数々とともに、ゲインズバラ、レノルズ、レイバーン、ターナーなど、イングランド絵画やスコットランド絵画の名品も多数展示。油彩、水彩、ドローイングを合わせて約90点展示。西洋美術の流れを知ることができる。
「写真と絵画-セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策」(アーティゾン美術館、4月29日〜7月10日)
アーティゾン美術館のコレクションと現代美術家が共演する「ジャム・セッション」として、セザンヌの絵画を基点に写真家の柴田敏雄と鈴木理策の作品を展示、写真作品と絵画の関係を問う。
19世紀、絵画は印象派をひとつの起点として、それまでの伝統的な表現から大きな変革を繰り返したが、そのモチベーションには写真の存在が少なからずあった。いっぽうの写真は19世紀半ばの誕生のころより、美術作品としての絵画的な表現が模索され、その意識は現代に至るまで続いている。
その作品において、人間がものを見て表現するという、近代絵画に共通する造形思考が感じられる柴田敏雄と鈴木理策。両作家が活動の初期より関心を寄せ続けていたセザンヌの作品を起点に、現代の写真作品と絵画の関係を問う試みだ。
「ボテロ展 ふくよかな魔法」(Bunkamura ザ・ミュージアム、4月29日~7月3日)
南米コロンビア出身の美術家、フェルナンド・ボテロ(1932~)。その生誕90年を記念した、日本国内では26年ぶりの展覧会がBunkamura ザ・ミュージアムで開催される。
ボテロは1950年代後半から欧米で高く評価されてきたアーティスト。その作品に描かれる人物や動物はふくよかで、果物は熟れきっているかのように膨らみ、楽器や日用品さえも膨張している。ボテロのボリュームへの関心は、17歳の頃に描かれた作品《泣く女》(1949)にすでに表れており、とくにイタリアで学んだ経験がその独自のボリューム感、官能性、デフォルメ表現に対する基盤を確固たるものにしたという。
注目は日本初公開の《モナ・リザの横顔》(2020)だ。ボテロは1963年、ニューヨークのメトロポリタン美術館でレオナルド・ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》が展覧された際、ニューヨーク近代美術館のエントランス・ホールに《12歳のモナ・リザ》(本展には出展されず)が展示されたことで大きな注目を集めた。なお、本展は名古屋市美術館(7月16日~9月25日予定)京都市京セラ美術館(10月8日~12月11日)に巡回する。
特別展「琉球」(東京国立博物館、5月3日〜6月26日)
2022年は沖縄県が日本に復帰して50年。これを記念し、琉球の歴史と文化をひもとく過去最大規模の特別展「琉球」が、東京国立博物館で開催される。会期は東京会場が2022年5月3日〜6月26日。なお本展は九州国立博物館にも巡回し、こちらの会期は7月16日〜9月4日となる。
東京国立博物館は明治期より沖縄県からの購入品や寄贈品で構成される潤沢な琉球のコレクションを所持。また、九州国立博物館は琉球の文化交流史を博物館活動のなかで重要視してきた。
同展では、こうした2館のコレクションのほか、九州・沖縄地区の博物館が所蔵するものも含めて、400点近い品々が一堂に集結。琉球がつむいできた文化を潤沢な資料とともに展観することを目指す。
「ゲルハルト・リヒター展」(東京国立近代美術館、6月7日~10月2日)
ドイツが生んだ現代美術の巨匠ゲルハルト・リヒター。その生誕90年となる2022年、東京国立近代美術館で大規模個展「ゲルハルト・リヒター展」が開催される。リヒターの大規模個展としては、日本の美術館では16年ぶりとなる。なお、本展は豊田市美術館に10月15日~2023年1月29日の会期で巡回する。
1932年東部ドイツ、ドレスデン生まれのゲルハルト・リヒターは、ベルリンの壁がつくられる直前の1961年に西ドイツへ移住し、デュッセルドルフ芸術アカデミーへ入学。「資本主義リアリズム」と呼ばれる運動のなかで独自の表現を発表し、注目を集めた。その後、イメージの成立条件を問い直す多岐にわたる作品制作を通じて、ドイツ国内のみならず、世界で評価されるようになる。
なかでも注目なのは、日本初公開となる大作《ビルケナウ》(2014)だ。第二次世界大戦時、ユダヤ人強制収容所でひそかに撮られた写真のイメージを出発点として描かれた、幅2メートル×高さ2.6 メートルの作品4点で構成された巨大な抽象画となる。その他、ゲルハルト・リヒターが自ら愛蔵してきた作品群を中心に、60年におよぶ画業を紐解く。
「ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡—市民が創った珠玉のコレクション」(国立新美術館、6月29日~9月26日)
ドイツ・ケルンのルートヴィヒ美術館が所蔵する、20世紀初頭から現代までの代表的なコレクション152点を、寄贈に関わったコレクターたちに焦点を当てて紹介する展覧会「ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡—市民が創った珠玉のコレクション」が、国立新美術館で開催される。なお同展は京都国立近代美術館に2022年10月より巡回する。
ルートヴィヒ美術館は、その館名に名を冠するルートヴィヒ夫妻が寄贈したポップ・アートのコレクションはヨーロッパ最大とも言われている。ペーター・ルートヴィヒをアンディ・ウォーホルが描いた《ペーター・ルートヴィヒの肖像》や、ジャスパー・ジョーンズが1950年代にモチーフにしていた数字を描いた作品《0-9》、ロイ・リキテンスタインが機関銃の発砲した瞬間を描いた《タッカ、タッカ》などが来日する。
さらにピカソのコレクションから《アーティチョークを持つ女》など8点の出展が予定されているほか、ロシア・アヴァンギャルドやシュルレアリスム、ドイツの戦後美術なども紹介される。
「ジャン・プルーヴェ」展(東京都現代美術館、7月16日〜10月16日)
20世紀の建築や工業デザインに大きな影響を与えたジャン・プルーヴェ(1901〜1984)の仕事を網羅的に紹介する大規模な展覧会が開催される。
1901年のパリに生まれたプルーヴェは、産業と芸術の融合を図ったアール・ヌーヴォーの一派であるナンシー派の影響下で、金属工芸家としてキャリアを出発させる。1923 年には初めて自身の工房を開き、その後はル・コルビュジエ、シャルロット・ぺリアンらとの数々の共同作業を行いながら、家具から建築へと仕事を拡大していった。プルーヴェはアルミニウムやスチールといった新たな建築素材を探求するとともに、解体して持ち運びすることができる椅子やプレハブ建築などの新技術を開発。その仕事は、デザイン、工芸、建築などひとつの分野に収まることがなかった。
会場では現存するオリジナル家具およそ100点に加え、ドローイング、資料を展示。さらに移送可能な建築物の屋外展示なども実施し、プルーヴェの仕事の全体像に迫る展覧会となる。
「ボストン美術館展 芸術×力」(東京都美術館、7月23日〜10月2日)
2020年4月から東京都美術館での開催を予定しながらも、新型コロナウイルスの影響により開催が中止された「ボストン美術館展 芸術×力(げいじゅつとちから)」は、新会期を2022年7月からとした。
1870年、ボストン市民ら有志によって設立され、1876年に開館したボストン美術館のコレクションが来日する展覧会。同館は古代エジプトから現代美術まで幅広い作品を収集し、そのコレクション点数は50万点近く、うち日本美術は約10万点におよぶ。今回は、エジプト、ヨーロッパ、インド、中国、日本など様々な地域で生み出された約60点の作品が来日する予定だ。
とくに日本美術では、「日本にあれば国宝」とも評される《吉備大臣入唐絵巻》や《平治物語絵巻 三条殿夜討巻》が本展のために里帰りをし、2作品揃って展示。また、江戸時代に伊勢長島藩の藩主だった増山雪斎の代表作《孔雀図》が本展のために修復され、日本で初公開される。
特別展「日本美術をひも解く─皇室、美の玉手箱」(東京藝術大学大学美術館、8月6日〜9月25日)
皇室に伝えられた品々を収蔵する宮内庁三の丸尚蔵館の名品・優品約90件で、日本美術をわかりやすく紹介する特別展「日本美術をひも解く─皇室、美の玉手箱」が東京藝術大学大学美術館で開催される。
平安時代三跡のひとり・小野道風の《屏風土代》、鎌倉時代の名品・やまと絵の集大成として名高い絵巻《春日権現験記絵》と元寇の様子を描いた絵巻《蒙古襲来絵詞》、安土桃山時代を代表する狩野永徳筆《唐獅子図屏風》、江戸時代の絵師・伊藤若冲の代表作《動植綵絵》といった、昨年宮内庁三の丸尚蔵館の収蔵品として初めて国宝に指定された5件の作品が初めて一堂に公開される。
とくに《動植綵絵》は、芍薬群蝶図、梅花小禽図、向日葵雄鶏図、紫陽花双鶏図、老松白鶏図など10幅がまとめて展覧されるという貴重な機会だ。
「国立新美術館開館15周年記念 李禹煥」(国立新美術館、8月10日〜11月7日)
国立新美術館が開館15周年を記念して、現代美術家・李禹煥(リ・ウファン)の大規模回顧展を開催する。同展は2022年12月より兵庫県立美術館に巡回する。
韓国の慶尚南道に生まれた李禹煥は、ソウル大学入学後の1956年に来日して哲学を学び、東洋と西洋のさまざまな思想や文学を吸収した。1960年代から現代美術に関心を深め、60年代後半に本格的に制作を開始。視覚の不確かさを乗り越えるために、自然や人工の素材を節制の姿勢で組み合わせ提示する「もの派」と呼ばれる動向を牽引した。近年は国際的にも評価が高まっており、グッゲンハイム美術館(ニューヨーク、アメリカ合衆国、2011)やポンピドゥー・センター・メッス(メッス、フランス、2019)など、世界の名だたる美術館で個展を開催。いっぽうで美術館での大規模個展は2005年、横浜美術館で開催された「李禹煥 余白の芸術」が最後となっており、今回は東京で初めての大規模回顧展となる。
「もの派」にいたる前の視覚の問題を問う初期作品から、彫刻の概念を変えた「関係項」シリーズ、精神性の高い絵画など、李の代表作が一堂に会する。加えて、李の新たな境地を示す新作も出品される予定となっている。
「アンディ・ウォーホル・キョウト / ANDY WARHOL KYOTO」(京都市京セラ美術館、9月17日~2023年2月12日)
昨年9月に京都市京セラ美術館で開催が予定されていたものの、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって開幕延期となっていた「アンディ・ウォーホル・キョウト / ANDY WARHOL KYOTO」が22年9月より開催される。
本展は、ウォーホルの故郷であるアメリカ・ピッツバーグにあるアンディ・ウォーホル美術館の所蔵作品のみで構成される日本初の展覧会であり、展示される約200点+映像15作の展示作品のうち、100点以上が日本初公開作品。京都のみで大規模なアンディ・ウォーホルの個展が開催されるのは初めてで、 関西では約四半世紀ぶりとなる。
ウォーホルの初期から晩年にわたる活動を紹介する本展。1950年代に商業イラストレーターとして活躍していた初期の作品から、60年代に事故や死を描いた象徴的な「死と惨事」シリーズ、 アンダーグラウンド映画やテレビ番組などの映像作品、 セレブリティ(有名人)たちの注文肖像画、 そして晩年の作品などが包括的に展示される。
特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」(東京国立博物館、10月18日〜12月11日)
2022年3月に創立150周年を迎える東京国立博物館(東博)。同館ではこれを記念して、膨大な所蔵品のなかから国宝89件すべてを含む名品と諸資料を展示し、その全貌を紹介する「東京国立博物館創立150年記念 特別展『国宝 東京国立博物館のすべて』」を開催する。
狩野永徳筆《檜図屛風》(1590)や《埴輪 挂甲の武人》(6世紀)、渡辺崋山筆《鷹見泉石像》(1837)といった国宝のほか、国宝刀剣19件がひとつの部屋で一堂に展示。さらに東博の150年を3期に分け、関連する資料や再現展示、各時代の映像などを通してわかりやすく紹介する。
すべて未知の世界へ―GUTAI 分化と統合(国立国際美術館&大阪中之島美術館、10月22日〜1月9日)
大阪の国立国際美術館と大阪中之島美術館では、「具体美術協会(具体)」の軌跡をたどる大規模展が開催される。
吉原治良(1905〜1972)を中心に1954年に結成され、1950年代から70年代にかけて⽇本の前衛美術を牽引してきた美術家集団「具体美術協会(具体)」。⼤阪・中之島は「具体」の活動拠点「グタイピナコテカ」が建設された地であり、本展は隣り合う大阪中之島美術館と国⽴国際美術館の共同開催となる。
2館同時開催という類い稀な形式で開催される本展は「分化と統合」というテーマを掲げ、世界的にも評価が高い「具体」の新たな像の構築を目指す。
「ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展」(東京都美術館、開催日未定)※1月22日の開幕は新型コロナで延期
ヨーロッパの古典絵画を数多く収蔵しているドイツのドレスデン国立古典絵画館のコレクションから、17世紀オランダ絵画の名品を紹介する展覧会。
なかでも注目なのは、ヨハネス・フェルメールが自身のスタイルを確立したといわれる初期の傑作《窓辺で手紙を読む女》だ。同作は壁面にキューピッドの画中画が塗り潰されていることが知られていたが、2017年の調査によりキューピッドはフェルメール以外の人物により消されたことが発覚。翌年から画中画の上塗り層を取り除く修復が開始され、2019年5月には、キューピッドの画中画が部分的に現れた修復途中の作品が記者発表にて公開された。
展覧会ではこの修復過程を紹介する資料とともに、大規模な修復プロジェクトによってキューピッドが完全に姿を現した《窓辺で手紙を読む女》の当初の姿を、所蔵館であるドレスデン国立古典絵画館での披露に次いで世界で初めて公開する。