SCAI THE BATHHOUSEが、谷中、天王洲(SCAI PARK)に続く第3のスペースとして、六本木のピラミデビルに「SCAI PIRAMIDE」をオープン。
その杮落しとして、没後10周年を経て再評価が高まる荒川修作の初期作品を取り上げる「BOTTOMLESS―60年代絵画と現存する2本の映画」展が開催。荒川による「図形絵画」と、マドリン・ギンズとの共作である2本の実験映画を紹介する。会期は4月22日~5月29日。
鑑賞者を導き入れる矢印や機械的なダイアグラム、日常のイメージやタイポグラフィが配された荒川の「図形絵画」の多くは大きなキャンバスに描かれ、身体的に知覚できるようにつくられている。平面作品《BOTTOMLESS No. 1》(1965)に描かれた、上下に引き伸ばされ底部が開いた立方体は、血液や精神の内部が流れ出る身体を意味すると言われている。
実験映像は、こうした平面における知的な探求に時間軸を加えた情念的な表現の模索と考えられるもの。《Why Not( A Serenade of Eschatological Ecology)》(1969)は裸の女性が部屋のドアやテーブルと格闘し、閉鎖空間における身体のあり方を問うものだが、《For Example( A Critique of Never)》(1971)ではその主題をさらに突き詰め、ニューヨークの路上を徘徊するホームレス少年の身体と周囲の環境の変化を記録し、そこに荒川+ギンズのテキストを繰り返し重ねあわせている。
鑑賞者の知覚を揺さぶり、難解な言葉による認識の手続きをかわしながら、新たな理解の手段を開発する可能性に向けられていた荒川の作品。本展では、当時まだ30歳前後だった荒川が投げかける、鮮やかなアイデアの数々を見ることができるだろう。