古代人の信仰から最新の素粒子データまでを参照し、私たちを取り巻く見えないエネルギーを可視化する彫刻作品やインスタレーションなどを手がけてきた森万里子。その個展「Central」が、東京・谷中のSCAI THE BATHHOUSEで開催される。会期は9月11日~10月17日。
コロナ禍の影響で長年の海外生活から一時帰国し、東京で制作を行っていたという森。本展は平面、立体と、この数ヶ月のあいだに制作したドローイングから構成される。
巨大な鉱物のように切り立つ高さ約1.2メートルの《Divine Stone VI》(2019)は、日本古来のアニミズムに見られる磐座(いわくら、神を降臨させる依り代として祭祀の中心となる岩)をめぐるフィールドリサーチに基づき制作された作品。表面には特殊なコーディングが施され、森が自ら開発に関わった波長の光を分離し、色彩のスペクトルを強調している。
また平面作品《Radiant Being》(2019)は、目に見えない「内なる光」を描いた作品《Dream Temple》(1999)の続編とも言えるもの。淡いメタリックパステルなどで描かれたドローイングを三次元CGに施した同作では、繊細な素材と形象の取り組みを通じて、個人の瞑想から広大な宇宙の領域へとイメージが広がる過程を見ることができるだろう。会期中には、《Dream Temple》のデジタル版もオンラインで公開される。
天体と地球、東洋と西洋、過去と未来など、様々な対立項を参照しながら、メディウムや研究領域の境界を超えた制作を行ってきた森。パンデミック下に生まれた最新作を含む本展では、これまでの試みを継承しつつ、その超越的なビジョンの中心を「光」として表現する。