花魁の高下駄から着想を得た「ヒールレスシューズ」などで知られるアーティスト・舘鼻則孝。コロナ禍の緊急事態宣言下に舘鼻は、テレワークにて100点もの連作からなる絵画シリーズ「Thundercloud Painting」を制作。現在、本シリーズは、作家のオフィシャルサイト内に設置されたオンライン・ビューイング・ルームにて鑑賞・購入することができる(~8月22日)。また同期間中、全100点のうち10点は、舘鼻が所属するギャラリー・KOSAKU KANECHIKAでも展示されている。
本シリーズは、江戸時代に流行した疫病に対する護符であった「疱瘡絵」と呼ばれる木版画から着想を得て制作されたもの。雲型の支持体に描かれた雷は、日本独自の死生観を主題とした作品を制作する舘鼻が好んで描いてきたモチーフである。日本において雷は、古くから結界を示す魔除けとして用いられてきた。これは、新型コロナウイルスが大流行している最中、本作が制作される動機にもつながっている。
コロナ禍で制作された本シリーズは、舘鼻のアトリエスタッフの在宅勤務期間に、テレワークを用いて実験的に制作した作品でもある。自粛期間においてもアトリエへ出社することなく、共同制作を継続させることは舘鼻がもっとも重きを置いた事柄だったという。オンラインで各々のクリエーションを共有することで段階的に制作を進行し、約2ヶ月間で作品数は100点に達した。