これまで、銀行店舗での美大生による作品展示や、アートフェアへの協賛など、美術に関する様々な取り組みを行ってきたSMBC信託銀行。そんな同行が、富裕層やビジネスマンの顧客がとくに多い日本橋支店で、新たな試みとなる「アートブランチ」をスタートさせた。
「アートブランチ」は、日本では個々に鑑賞する機会の少ない作品を展示することを目的としたスペースで、同行に口座を持っていなくても作品を鑑賞することが可能となっている。
同行代表取締役副社長・野田浩一は、SMBC信託銀行が日本で唯一、美術品信託を取り扱うなど、アートを切り口にしたサービス提供に取り組んできたことに触れながら、「世界のアート市場が伸びるいっぽう、日本のシェアは3.4パーセント以下」とアート市場のギャップについて言及。「アートには株や債券と同様の資産的な価値があるが、ほとんど認知されていない。アートが金融資産のポートフォリオとしてとらえらていない」とし、欧米と比較して遅れを取っている状況であることを指摘する。
このような状況下で、アートブランチは何を目指すのか? 野田副社長は次のように抱負を語った。「現代美術に初めて触れる方にも見ていただき、普段感じられない何かを感じとってもらえたら。銀行は民間企業だが、社会性や公共性がある場所。公共的使命として、文化の伝道師として、微力ながら貢献したい」。
店内では、絵画から工芸まで、6名のアーティストによる幅広い作品を展示。名和晃平をはじめ、陶芸の伝統的な技術に基づきながら大胆かつポップな色彩の作品を手がける桑田卓郎、花魁の高下駄に着想を得た「ヒールレスシューズ」のシリーズなどで知られる舘鼻則孝、建築と陶芸を融合した方法で未来的な造形に挑む奈良祐希、生物多様性をテーマとした作品を手がける小松孝英、神獣などをテーマにライブペインティングも行う小松美羽による作品を見ることができる。
海外ではUBSやドイツ銀行などがアート界のスポンサーとして強い存在感を放つなか、日本では銀行とアート界の連携は決して強いとは言えない。このような状況において、「アートブランチ」をきっかけに、銀行とアート界の関係がより強化されることが期待される。