2020.6.15

目印は豪華絢爛な建築。ホテル川久が「川久ミュージアム」として本格始動へ

世界各地の職人技術を融合させた豪華絢爛な建築で知られる和歌山県の「ホテル川久」。今回、創立より30年の時を経て、7月1日より私設美術館「川久ミュージアム」として本格始動することが決定。同館が保管している数百点ものオーナーコレクションが一挙公開される。

川久ミュージアム
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 1989年のバブル絶頂期に始動した「世界の数奇屋」をつくるプロジェクトのもと、和歌山県南紀白浜に建設された「ホテル川久」が、美術館として生まれ変わる。

 中国、ヨーロッパ、イスラム、日本と、世界各地の匠の技術を融合させた同ホテルは、総工費400億に上り、延床面積2万6000平米、建設期間は2年を費やした。

 外壁を飾るのは、中国の紫禁城にのみ使用を許された鮮やかな「老中黄」の瑠璃瓦。館内は、イタリアの職人によって敷き詰められた緻密なローマンモザイクタイルの床や、フランス人間国宝の手による壮大な22.5金の金箔ドーム天井に加えて、ロビーの壁面には、メトロポリタン美術館の鑑定で2世紀頃のシリアのものと判明した、貴重な鹿と豹のビザンチンモザイク画が埋め込まれているなど、見どころ満載だ。

ローマンモザイクタイル(イタリア)
中尾淳 六曲一双

 川久は、通常大規模施工はゼネコンに一任する作業を、すべて各業界の一流の技術を持つ職人たちにオーナー自ら依頼。左官職人・久住章が主宰する「花咲団」による疑似大理石でつくり上げた1本1億円の柱26本のほか、土佐漆喰で仕上げたホテルエントランスの大庇、陶芸家・加藤元男による信長塀や陶板焼きのタイル壁など、日本人の匠も数多く参加している。93年には、優れた建築作品と設計者に贈られる「村野藤吾賞」を受賞した。

 そして今回、30年の時を経て、同館が保管している数百点ものオーナーコレクションを一挙公開。7月1日より私設美術館「川久ミュージアム」として本格始動する。インテリアから骨董、絵画まで、オーナーが世界各地で買い付けてきたアートの数々を、豪華な空間で堪能できる。

 野外には、イギリスの環境彫刻家バリー・フラナガンによる幅6メートルものうさぎのブロンズ像、館内には、中国清代前期の七宝焼きや陶器、ダリ、シャガール、横山大観など、名だたる画家の作品が並ぶ。また常設展は、イギリスを代表する彫刻家ヘンリー・ムーア(1898〜1986)の「母と子」シリーズより26点を公開。同シリーズは、アフリカン・アートからうかがえる思いやりや慈悲と、キリスト教のイメージを融合させることにより、独自のスタイルを形成したムーアの代表作のひとつだ。

ジョルジオ・チェリベルティ 愛と自由と平和 
バリー・フラナガン うさぎ
ヘンリー・ムーア 「母と子」シリーズより