1958年、日本を代表する建築家の村野藤吾が設計した新歌舞伎座が大阪・なんばに竣工した。それから半世紀を経て、新歌舞伎座は2009年に閉館。この跡地を利用したのが、12月1日開業の「ホテルロイヤルクラシック大阪」だ。
このホテルの設計を担当したのは、国内外で多数のプロジェクトを手がける隈研吾。外観は、新歌舞伎座の特徴だった唐破風(からはふ)が連なる意匠を引き継ぎ、低層部に復元した。
ホテルは地下1階、地上20階建て。5つの宴会場と2つのレストラン、カフェラウンジを有しており、客室はスタンダードルームが全105室。18~19階の高層階にはプレミアムルームとスイートルームがある。
館内では、格子模様や特徴的な直線が随所に見られ、隈建築らしさを感じることができる。またチャペル「永遠~TOWA~」や各宴会場は、隈研吾が得意とする木のぬくもりが生かされた空間となった。
この建築とともに注目したいのが、「ミュージアムホテル」という同ホテルのコンセプトだ。監修を務めたのは、東京藝術大学特任教授の伊東順二。作品展示には、ホワイトストーンギャラリーが関わっている。
館内では、フロントやエレベーターホール、客室廊下といったパブリック・スペースと各客室に、100点以上の美術作品が展示。
これら作品のうち、とくに重要なのが「具体美術協会」の作品だ。具体美術協会は1954年、吉原治良を中心に兵庫県芦屋市で結成された芸術家集団。72年の解散以降もその影響力は強く、近年では2013年にニューヨークのグッゲンハイム美術館で「具体:素晴らしい遊び場 Gutai: Splendid Playground」が開催。これを契機に再評価の機運が高まり、アート市場でも高い値がつけられている。
そんな具体作家の作品として、このホテルでは、吉原の作品はもちろんのこと、白髪一雄、田中敦子、上前智祐、嶋本昭三、元永定正ら代表的な作家たちの作品を随所で見ることができる。
なかでも20階のバーラウンジ前に展示された白髪の巨大な作品《おんくろだなぁ うんじゃく》は、館内随一の存在感を放つと言っていいだろう。
もちろん展示作家は具体だけではない。例えばバーフロアには草間彌生のかぼちゃの立体が、2つのチャペルにはジャン=ミシェル・オトニエルの立体がそれぞれ展示。また、各フロアのエレベーターホールでは、若手作家たちの作品も楽しめる。
こうした展示作品は、適宜入れ替えも行われる予定。今後さらに多くの作品が館内を埋めていくことも期待される。近年、ホテル業界が熱い視線を注ぐアート。その最新のコラボレーションのかたちを、ここホテルロイヤルクラシック大阪で確かめたい。