東京・谷中のSCAI THE BATHHOUSEで、毛利悠子とデイヴィッド・ホーヴィッツによる二人展「summer rains」が開催される。
毛利は1980年生まれ。これまで磁力や重力、風、光など、環境のなかに存在するが目に見えない力の働きにフォーカスした作品を手がけてきた。近年では、個展「ただし抵抗はあるものとする」(十和田市現代美術館、2018)や「100年の編み手たち―流動する日本の近現代美術」(東京都現代美術館、2019)への参加も記憶に新しい。
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本展で毛利は、駅の構内で見かける水漏れ現場からアイデアを得た代表作「モレモレ」シリーズを、ショーケースのかたちで発表。また、コーチ=ムジリス・ビエンナーレ(インド、2016)に出展され話題を呼んだ、電磁石がオブジェに動きを与えて音を紡ぎ出す《コールズ》をギャラリーの特徴を活かして再構成した展示を行う。
いっぽうホーヴィッツは1982年アメリカ・ロサンジェルス生まれ。これまで時間や距離といった概念から、花や石など身近な素材までを扱い、コンセプチュアルな作品を発表してきた。
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本展では、生物学者レイチェル・カーソンによる人間の血液と海水成分の類似性に関する示唆からインスピレーションを得た《When the ocean sounds》を展示。同作は海の音をオノマトペに翻訳し、人間の声で再現するためにつくられたもので、今回は日本語の新作も発表される。
それに加え、オーサーシップ(著作者)の概念を問う《Mood Disorder》も発表。同作は、海を背景に両手を顔で覆ったホーヴィッツ自身の画像をウィキメディア・コモンズにアップし、それがインターネット上で増殖していく様子を記録した一連のプロジェクトだ。
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これら、水や雨をモチーフとしたふたりの作品が並ぶ本展。ものが発する音や水音、ラジオ、人の声であふれる展示空間は、作品と対峙し思考をめぐらす静かなひと時を鑑賞者にもたらすことだろう。