アニッシュ・カプーア、遠藤利克、大庭大介、ヴァジコ・チャッキアーニによるグループ展が、東京・谷中のSCAI THE BATHHOUSEで開催されている。
カプーアは、存在と不在、窪みと膨らみ、隠蔽と露出など、対極的な物事を巧みに用いて、シンプルなフォルムに深い精神性を呼び起こす作品を発表してきた。代表作に数えられる、巨大な皿のような凹型の彫刻シリーズの最新作《Untitled》(2018)は、マットな真紅色にコーティングされ、鑑賞者の視点によってその色彩の深度を変えていくもの。この色面には、ガーゼで覆われた肉塊を思わせるシリコーン製の彫刻が対峙するように配置され、マテリアルの光沢と脂肪を思わせる白色が混ざった質感によって、絵画のように陰影に富んだ色彩が表現される。
「もの派」やミニマリズムの動向をもっとも批判的に継承したひとりである遠藤は、木材を円環や円筒、柩のような直方体に彫塑して燃やすという行為によって、共同体としての人間やその根源にある衝動を喚起する作品を手がけてきた。作品における水や火などのプリミティヴな要素は人間の情動の中心に現れる「空洞」を象徴し、遠藤にとってその空洞は、すべてを吸い込む引力と魔力のあるところ、また無限の幻想の根源を意味し、日常の境界線を越えた吸引と放出の力を孕む場だという。
そのほか、ファウンド・オブジェクトに最小限の手を加えることで、出身国・ジョージアの社会的な出来事やそのトラウマを静かに語るチャッキアーニ、そして特定の制作方法に従い、矩形のキャンバスを観賞者との対話の場ととらえてきた大庭大介の作品が展示されている。