時代性を鋭く切り取り、独自の観点から作品を生み出してきた横尾忠則。ビジュアルアートから文筆活動まで幅広く活躍する横尾は、美術史の知識や探究心から生まれるバリエーション豊かな作品群で、つねに国内外から注目を集めている。
横尾は1936年生まれ。幼少期に戦争を体験したため、作品のなかにも進駐軍や空襲の飛行機など、端々に戦時の記憶や体験の断片がモチーフとして登場していた。戦後、歴史とともに成長し制作を行ってきた横尾にとって、日本の現代史は自身の制作歴とリンクしているともいえるだろう。
今回、東京・谷中のSCAI THE BATHHOUSEで開催される横尾の個展は「B29と原郷 -幼年期からウォーホールまで-」という意味深なタイトルがつけられ、マッカーサーやアンディ・ウォーホルなど、戦後の歴史上で存在感を放った著名人たちが題材となる。本展では、その作品群に「Y字路」シリーズから数点を組み合わせて展示。多層的な世界がつくり上げ、横尾の戦中戦後の文化的体験を回顧することを試みる。