ジャマイカの風景に見る、世代を超えた記憶と憧憬。ハーヴィン・アンダーソンによる日本初個展をチェック

美術史を広く参照しながら、自身のルーツであるジャマイカにまつわる記憶・場所・時間をテーマに絵画を制作するハーヴィン・アンダーソンの個展「They have a mind of their own」が、東京・南青山のRAT HOLE GALLRYで開催されている。会期は5月18日まで。

ハーヴィン・アンダーソン Speech Bubble 2019 Courtesy the artist and Thomas Dane Gallery

 ハーヴィン・アンダーソンは1965年生まれ。自身のルーツであるジャマイカにまつわる記憶・場所・時間をテーマに制作し、2017年にはイギリス・テートが主催するターナー賞にノミネートされた。今回、そんなアンダーソンの日本初となる個展が、東京・南青山のRAT HOLE GALLERYで開催されている。

 ジャマイカ系イギリス人である自身と、ジャマイカからの移民である両親の世代の記憶と経験を重ね合わせて制作を行うアンダーソン。作品には、地元の理髪店や公園、カリブ海文化特有の装飾が施されたフェンスや防犯用の鉄格子といったモチーフが登場し、特定のコミュニティやそこに根付く文化が示される。

ハーヴィン・アンダーソン Study for Ascension I 2017 Courtesy the artist and Thomas Dane Gallery

 本展で発表される新作は、ジャマイカの海岸線に点在するホテル群と、それらを取り囲むように草木が生い茂る風景を元にしたもの。描かれるイメージは、観光客の要求を満たす「楽園」の計画なのか、建設中あるいは計画が失敗に終わり「夢の跡」と化した様子なのか判然としない。しかしアンダーソンは、まるで自身が建築家となって新たな風景を築き上げるかのように、新たなユートピアを描き出す。

 そのほかにも、《Grafting》《Security Grille》などのドローイングのほか、牧歌的な熱帯の風景を描いた《Speech Bubble》といったシリーズでアンダーソンを紹介する本展。カリブ海の風景と、その内奥にあるものを見つめて描かれる絵画は、私たちに「故郷」のあり方を問いかけるだろう。

ハーヴィン・アンダーソン Camera Shake 2019 Courtesy the artist and Thomas Dane Gallery

編集部

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