新しい表現への挑戦
──絵画の平面において様々な試行錯誤を行っていらっしゃいますが、吉田さんが絵画という表現を選ぶ理由はなんでしょうか。
吉田 小さい頃から絵を描くことが好きで、小学生のときには、図書館で名画がたくさん掲載されている画集もよく見ていました。その画集には、フランシスコ・デ・ゴヤの《1808年5月3日、マドリード》(1814)という作品が載っていたのですが、凄惨な戦争画と言えるようなその絵のページだけ、怖くてずっと見ないように飛ばしていました。しかしあるときから、今度はそのページばかりを見るようになったんです。作家名も作品名も当時は気にしていませんでしたが、その作品には不思議と求心力がありました。絵を描くことも見ることも好きないっぽうで、私は自分に自信がなかったので、作家になりたい、作家になれる、とは思っていませんでした。
しかし大学3年生のときに初めて、自分が好きなものを表現して、それを人と共有できることを素晴らしいと感じる機会がありました。そのきっかけになったのは、当時受けていたインスタレーションの授業です。これまでの絵画制作での経験が使えないと気づいたときに、初めて自分自身と向き合いました。自分は何が好きなのかという自己問答を行った結果、「不思議な世界」のようなものに惹かれていることを自覚しました。最終的には、壁に心臓や黒魔術的なモチーフが描かれた絵を貼ったりと「怪しい研究を続けているヨーロッパの架空の人物の部屋」を表現するインスタレーションをつくりました。


また最近では、戦争という出来事が自分のなかに大きな影響を与えました。ロシアがウクライナに侵攻を開始して以降、自分のドローイングの売り上げの半分を寄付にあてるなど、戦争で苦しむ人たちに対して自分にできることがないか、ずっと探していました。あまりに凄惨な現実は直視できないこともありますが、いまはできるだけ世界で起きていることと向き合いながら、絵を描きたいと思っています。
──今回の受賞の経験を活かして、今後はどのような作品をつくっていきたいですか。
吉田 本当に私が受賞してもいいのだろうかと思う部分もあり、技術面でさらに磨きをかけていきたいと思っています。また、海外で展示してみたいという目標もあります。自分の立ち位置を確認する意味でも、様々なところで作品を発表し、広い視野を持てるようになりたいです。
また、格式高いものという絵画のイメージを払拭したいという思いもあります。古来より絵には、民間の祈りや願いなどが込められていたり、印や標識として機能することもありました。私の作品もそのように「もの」として存在してほしいと考えているので、空間そのものを演出するインスタレーションに挑戦したいという思いもあり、立体表現も少しずつ取り入れてみたいです。こうして挑戦したいことを話せるようになったのも、今回グランプリをいただけたことで、少し自信が持てたからなのかもしれません。




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