2021.2.17

真に力がある作品を選ぶ公募コンクール「FACE 2021」のグランプリは魏嘉に。受賞作品展では全入選作品83点を展示

「年齢・所属を問わず、真に力がある作品」を募集する公募コンクール「FACE」。第9回となる「FACE 2021」では、応募作品1193点から入選作品83点が選ばれ、合議制でグランプリに魏嘉《sweet potato》(2020)が選出された。「SOMPO美術館」では、グランプリをふくむ全受賞・入選作品を展示する「FACE展 2021」が3月7日まで開催されている。

文・写真=中島良平

FACE 2021にて、魏嘉と受賞作《sweet potato》(2020)
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 「年齢・所属を問わず、真に力がある作品」を募集する公募コンクール「FACE」。第9回となる「FACE 2021」では、1193名から応募があり、3次の「入選審査」と3次の「賞審査」を経て、魏嘉《sweet potato》(2020)がグランプリに選ばれ、賞金300万円が授与された。

 公募条件は「年齢・所蔵を問わず、真に力がある作品」。審査員は堀元彰(東京オペラシティアートギャラリー チーフ・キュレーター)、山村仁志(東京都美術館学芸担当課長)、椿玲子(森美術館キュレーター)、薮前知子(東京都美術館学芸員)、中島隆太(SOMPO美術館館長)の5名。合議制のため、昨年の第8回はグランプリ該当なしとなったが、今年は審査員5名が納得する作品として魏嘉がグランプリに輝いた。

魏嘉 sweet potato 2020

 魏嘉は台湾から多摩美術大学の大学院油絵専攻に留学し、2019年に修了。「生まれ育った土地を改めて認識したことがきっかけとなってこの作品を制作した」と説明する。

 「2020年3月ごろに一度台湾へ帰国したのですが、新型コロナウイルスの影響で日本に戻れず、半年ほど台湾に滞在する期間がありました。台湾島は、よくサツマイモのかたちに似ていると言われます。台湾には『堅忍不抜の精神を養う』ことを意味する『蓄薯精神』という言葉があり、サツマイモのかたちはそこに由来するという説もあります。以上のことから、サツマイモは台湾のひとつのシンボルと言っても過言ではないと考えており、タイトルを《sweet potato》としました」。

 パステル、スプレー、エアブラシを駆使し、描き上げた作品。そのモチーフはどのように選んだのだろうか。

 「画面右下のネズミのようなかたちは、文字を使ってかたどったもので、抽象的なお椀や食べ物のイメージです。文字の内容は市場や美術館、観光地などの名前を表していて、台湾に滞在中に家族や友だちと一緒に行った場所を記しました。2020年に台湾に居た時間を大切にしたいと思い、これらの場所に行ったことを記録するように、テキストグラフィックの形式でイメージをつくりました」。

 多摩美術大学の大学院油画専攻への留学前に、台湾では国立台湾芸術大学でグラフィックデザインを専攻していたという魏のバックグラウンドが、受賞作には反映されている。また、絵画よりも映画や小説などから受けた影響の方が大きいそうで、好きな美術家としてトム・サックスとナム・ジュン・パイクの名前を挙げるあたりからも、絵を描きながらも現代美術の領域で表現を広く展開する意志が感じられる。

 「最近は中国の山水画をモチーフに制作したいという思いがあり、これからも絵画は描き続けていきたいです。まだ自分の表現が定まっていないため、制作しながらどんどん発見していきたいですし、自信が持てる手法を確立したいです」。

 グランプリ以外では、優秀賞を鈴木玲美《夜は静かに寝たい》(2020)、高見基秀《対岸で燃える家》(2019)、町田帆実《records》(2020)の3作品が受賞し、賞金は各50万円。

 加えて、読売新聞社賞には土井沙織《バイバイフリードリヒ》(2020)が選出。堀元彰、山村仁志、椿玲子、藪前知子の審査員4名による審査員特別賞は、それぞれ山本亜由夢《パライソ》(2020)、内田早紀《鱗粉のゆくえ》(2020)、井上りか子《感触は、ゆで卵の黄身》(2020)、横山麻衣《Man-made Object》(2020)に贈られている。

「FACE展 2021」展示風景

 FACE展2021の会場では、上記の受賞作品を含め、油彩やアクリル、水彩、パステルなど画材もさまざまに、意欲的な入選作品が83点並ぶ。会期中には観覧者投票による「オーディエンス賞」の選出も行われるので、心を動かす作品と出会える会場を訪れてみてはいかがだろうか。

「FACE展 2021」展示風景