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期待のアーティストに聞く! 
多田圭佑 
虚構と現実があざなう「事実」

絵画作品の制作を通じ、現実と虚構をめぐる表現や絵画の可能性を探究する、1986年生まれの多田圭佑。MAHO KUBOTA GALLERY(東京・渋谷)で3月10日から個展「forge」を開催する作家に、作品について聞いた。

文=野路千晶

スタジオ航大(茨城・取手)にて Photo by Fuminari Yoshitsugu

錆びた釘が顔を見せる朽ちかけた木の床に、点々と絵具の跡が残されている。またそれらと比較し若々しく見える床材を支持体にするように、大胆に斜線が描かれる。

これらのシリーズ「trace/wood」の木材は、絵具によって成形・着色されたもの。つまりそこに木は実在せず、目の前の作品はすべて絵具によって成立しているという。「自分にとってのアクリル絵具は、絵具であると同時に、造形するための素材なんです」と作家の多田圭佑は話す。多田の関心の根幹には、CGが多用されたテレビゲームがある。ゲームクリエイターに必要と助言されたデッサンを学ぶために絵画教室へと通った多田は、その後、美術大学へと進学。在学中には立体制作などを通してリアリティーを模索した。「目の前にあるものを“本物”だと知覚した時点でそれは本物になる。ゲームをはじめテクノロジーの発展が推し進める現実と虚構の不確かさに、絵画の新しい可能性があるのではないかと考えています」。

多田圭佑 trace / wood #27 2017

MAHO KUBOTA GALLERYにて3月10日から4月28日まで開催される個展「forge」では、「trace/wood」に加え、油彩画のシリーズ「残欠の絵画」など新作約10点を展示。「残欠の絵画」は、ヴァニタスなど静物画をモチーフとし、完成した絵画の表面をあえてひび割れさせることで、作品をとりまく時間を歪ませる作品だ。今回は本シリーズにて、CGによる架空の風景をモチーフとした作品を新たに発表する。個展のタイトル「forge」とは「捏造」などの意味を持つ。「捏造の意味さえも無効化するような時代の分岐点に立っていることを常に意識しています。善悪が宙吊りにされているともいえる現代の状況への興味は、作品制作の大きな原動力なんです」。

(『美術手帖』2017年3月号「ART NAVI」より)

編集部

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