20年を彩ったユニフォームの変遷
同館は、2004年の開館時、そして10周年記念という節目ごとに、その時代のテーマに沿ったユニフォームに新調してきた。

開館時のユニフォームを手がけたのは、ISSEY MIYAKE(滝沢直己)である。開館記念展「21世紀の出会い−共鳴、ここ・から」に三宅一生が作品を出展していた縁が、その起用の背景にある。「ジェンダーフリー」というキーワードのもと、性別を問わないベストやジャケットなど3種のスタイルが用意され、素材には軽量のナイロンが採用された。表地が薄紫のものの裏地にビビッドなピンクをあわせるなど、折れジワのあるテクスチャーから裏の色が透けて見える、透明感のある視覚効果が特徴であった。さらに5色のカラーバリエーションを展開し、スタッフが毎朝その日の気分で着用する色を選択できるシステムを導入した点も特徴的である。
ここには、「ユニフォームが着用者の個性を覆うのではなく、それぞれの個性を引き立て、袖を通したときに美術と触れあったときのような楽しさを感じてもらいたい」という、滝沢直己の衣服に対する思想と願いが反映されていた。
続く2014年の10周年の際に手がけたのは、minä perhonen(ミナ ペルホネン)の皆川明である。2010年に同館で個展「ミナ ペルホネン The future from the past 未来は過去から」を開催したことが起用のきっかけとなった。

「調和」や「自然との融合」というキーワードのもとデザインされたユニフォームは、パッチワーク柄を採用しており、衣服ごとに柄の配置がわずかに異なる仕様となっていた。「違っていることで調和する」という人と人の関係性から着想を得たデザインであり、スタッフの姿が館内において光や風のように自然に映り込み、空間に調和することを目指して設計された。
また、皆川は「この制服は着続けるなかで綻び、擦れてきたときにはそこにパッチワークをし、直しながら着つないでいくことを前提にしている。そのパッチワークはときの軌跡であり人の記憶である」と語っている。資源の循環を重要視しつつ、これから先美術館が紡いでいく10年を見据えたデザインとなっていた。
最新ユニフォームの細部に宿る、美術館のアイデンティティ
2024年、20周年の節目に誕生した3代目のユニフォームは、高橋悠介率いるCFCLがデザインを手がけた。今回は、同館の建築的特徴と、現代における機能性をかたちに落とし込んだ設計となっている。高橋が「建築との調和と、空間との相性をとくに意識した」と語る通り、ベースカラーには、少しブルーがかって見える同館の建築に特徴的な連続窓などの色彩が採用された。さらに、建物を支える支柱に見立てた、同館のアイコンカラーである鮮やかな「オレンジ」のストライプが背中のデザインに施されている。これによって、来館者の作品鑑賞を妨げない配慮を保ちつつも、スタッフであることを遠方からでも識別できる、ユニフォームとしての高い視認性を両立させた。


また、衣服としての実用面においても細かな設計がなされている。10年間の着用に耐えうる物理的な耐久性を意識しながら、多種多様な体型・年齢のスタッフ全員が着用できるよう、サイズ展開にも異なるアプローチを取っている。コートは2サイズに絞り、夏用のTシャツでは、あえてワンサイズ(1サイズのみ)のオーバーサイズに設計することで、着用者の体型を選ばないシルエットを実現している

さらに、現場のスタッフとの対話に基づき、A5サイズのノートや館内マップ、トランシーバーが出し入れしやすい大容量のパッチポケットを配置。業務上必要なものを持ち運びしやすくするためにポシェットも用意した。カウンターに座って接客する際にも衣服のシルエットが崩れないよう深くスリットを入れるなど、細部に至るまで現場の業務状況に最適化された仕様となっている。



















