日本プロレタリア映画同盟「プロキノ」は佐々元十(げんじゅ)、岩崎昶(あきら)、北川鉄夫らによって1929年に結成。度重なる弾圧とメンバーの検束によって34年に解体して以降、作品が散逸し、80年代にわずかな記録が有志の手によって掘り返された。
「境界─プロキノに寄せて」と題された本展では、ASAKUSAの一階でプロキノ京都支部《山宣渡政労農葬》 (1929)、東京プロキノ《第12回東京メーデー》(1931)、プロキノ《土地》(1931)、プロキノ《全線》(1932)といった、おもにメーデーや労働闘争に関するニュース映画4本をモニターで上映。《第12回東京メーデー》では、当時の日本労働組合全国協議会の活動を抑止するために、官憲による厳戒態勢がしかれるなか、浜松町(芝浦埋立地)に集合した労働者が昭和通りを通って上野公園に向かうまでの様子が記録されている。
また、このプロキノ作品の上映にともない、ギャラリーの2階では浅草近くの日雇労働者エリア(ドヤ街)「山谷」で搾取に抵抗する労働者を描いた佐藤満夫、山岡強一共同監督による映画《山谷─やられたらやりかえせ》(1985)をはじめ、2015年のヴェネチア・ビエンナーレで銀熊賞を受賞した映画監督、イム・フンスンの《済州島の祈り人》(2012)など、歴史的な事実を描き出す4本のドキュメンタリー映画も上映される。