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風間サチコが語る「私をかたちづくった5つのもの」──ニーチェ、ドイツ表現主義、ザ・レジデンツ……。【2/2ページ】

4. 古書・古雑誌・古絵葉書

 私のライフワークとも言えるのが、古書や古雑誌、古絵葉書の収集です。これがないと生きていけないというくらい、18歳の頃からずっと集めています。とにかく「印刷物」が大好きなんです。スーパーのチラシから、ちょっとした「しおり」のようなものまで、あらゆる印刷物に惹かれます。ヤフオクなどで、明治時代から大正、昭和初期にかけてのものを入手しています。

 絵葉書に関しては観光名所のものが集めやすいのですが、なかには「独特な流派の盆栽」の絵葉書や、「岩の上に人が立っている」シリーズといった、不思議なものもあります。当時はなぜか「岩の端っこの落ちそうなところに人が立っている写真」が流行りの構図だったらしく、日本各地のそういう絵葉書が集まってくるんです。たくさん集めているうちに、「この時代は、こんな構図が流行りだったんだな」とデータとしてわかってくるのがすごく面白い。集めているうちに、1000枚以上になってしまいました。

風間がライフワークとして蒐集している古絵葉書 写真提供:弘前れんが倉庫美術館

5. ザ・レジデンツ

 ザ・レジデンツはサンフランシスコを拠点とする、目玉のマスクを被った匿名アーティスト集団です。私は3人兄妹で、1歳上の兄から様々なカルチャーを勧められるなかにこのザ・レジデンツもあって聴き始めました。

ザ・レジデンツのサード・アルバム『The Third Reich 'n Roll』(1976)に収録された「Third Reich」。ミュージックビデオは、ドイツ表現主義の影響を感じさせる
風間が初めて購入したザ・レジデンツのレコード 写真提供:弘前れんが倉庫美術館

 最初に聴いたときは「ヘンテコで、よくわからない」と思ったんです。次第に作品の内容が、「典型的なアメリカ人」(自分がヒーローで、アメリカ至上主義に微塵の疑問をもたない人)のことなど、マジョリティへの皮肉や揶揄だとわかり、不可思議な音楽性に潜ませた攻撃性に震えましました。聴けば聴くほど味があるし、前衛的でもある。ジャケットやブックレットなどのビジュアルも格好いいんです。

 彼らが掲げているモットーに「曖昧至上主義」と「ワン・コンセプト・ワン・アルバム主義」というものがあります。アルバムをつくるときのテーマは必ずひとつで、余分な曲は入れないという確固たる考えのもと制作している。この考えは、私が展覧会を開催する際の大きな指針にもなっています。

 風間に影響を与えたこの5つのものからは、「近代社会への批評と反骨の精神」や、社会における「人間の行いの滑稽さ」といった、風間の作家性の核心が伝わってくる。19世紀から20世紀にかけてのカルチャーや、大きな時代のうねりのなかで生み出された表現が風間の感性と響き合い、唯一無二の作品へと結実していることがわかるだろう。

 弘前れんが倉庫美術館で開催中の個展では、これまでの制作活動の足跡をたどりながら、その現在地を体感することができる。社会への鋭い目線とユーモアが織りなす風間ワールドを、ぜひ会場で目撃してほしい。

編集部