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幻影を呼び込む空間。椹木野衣評 冨安由真展「漂泊する幻影」、青木美紅「1996120519691206」展

KAAT神奈川芸術劇場の空間をインスタレーションへと変貌させた冨安由真の「漂泊する幻影」展と、「ヘルマウス」と呼ばれる悪魔から着想を得た新作を発表した青木美紅の「1996120519691206」展。ふたつの個展について、亡霊や幻影の気配を呼び込む装置として位置づけながら、椹木野衣が論じる。

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現代のポップ・アートに見る二重性とユーモア。清水穣評 カスパー・ミュラー「In and Out」展、臧坤坤「Double Screens」展

オブジェや平面、既製品を組み合わせ、ユーモアや皮肉を込めたインスタレーションを手がけるカスパー・ミュラーと、絵画、オブジェクト、そして画中にあるものに等価な関係を構築しようとする臧坤坤(ツァン・クンクン)。現代のポップ・アートをめぐる二元論と、同時期にチューリヒで開催された両者の個展に見られる二重性について、清水穣が論じる。

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「運動史」としての写真史 若山満大評「「写真の都」物語 ―名古屋写真運動史:1911-1972―」

名古屋市美術館にて、2月〜3月に開催された本展では、1920年代に日本のピクトリアリズムをけん引した〈愛友写真倶楽部〉や写真家・東松照明を生んだ都市、名古屋の写真表現の展開に焦点をあてた。同地名古屋に根ざす美術館で、その物語はどのようにつむがれたのか? 東京ステーションギャラリー学芸員の若山満大がレビューする。

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「演じる」ことで描き出す都市の歴史と現在。北出智恵子評 オル太「超衆芸術スタンドプレー 夜明けから夜明けまで」

6人組のアーティスト集団・オル太による展覧会「超衆芸術スタンドプレー 夜明けから夜明けまで」が、東京・墨田区のアートプロジェクト「ファンタジア!ファンタジア!」のプログラムとして開催された。本展では、リサーチをもとに構成したストーリーを再演する映像を軸にインスタレーションを展示。「演じる」ことで地域の歴史と人々の営みを掘り起こし、新たに物語を紡いでいく実践の方法について、キュレーターの北出智恵子が論じる。

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甕たちの虚無に響く声 能勢陽子評「甕々の声」

アートラボあいちにて、キュレーター・西田雅希、アーティスト・黒川岳によるプロジェクトが開催された。「とこなめ陶の森資料館」(愛知県常滑市)所蔵の大甕と土管によるサウンド・インスタレーションを展開。能勢陽子がレビューする。

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声なき人々の記憶と存在を伝える。飯岡陸評 「聴く─共鳴する世界」展

「聴く」という行為を通して、世界と関わる実践を芸術作品によって紹介する展覧会「聴く─共鳴する世界」がアーツ前橋にて開催された。同時開催された「場所の記憶 想起する力」展や過去の同館の取り組みなどとも反響しあう本展の試みを、キュレーターの飯岡陸がレビューする。

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SNS時代に考える、言葉/文字に宿る魂とは。荒井保洋評「文字模似言葉(もじもじことのは)」展

具体美術協会での活動でも知られる美術家の今井祝雄がアート・ディレクションを務める「文字模似言葉(もじもじことのは)」展が、ボーダレス・アートミュージアムNO-MA(滋賀)で開催中だ。現代の情報社会において、文字や言葉のあり様を再検討する本展について、滋賀県立美術館学芸員の荒井保洋が論じる。

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「イルフ」が夢見た新しい芸術。 長谷川新評「ソシエテ・イルフは前進する 福岡の前衛写真と絵画」

福岡の美術の系譜のなかで特異な存在感を放つ前衛美術グループ「ソシエテ・イルフ」。その約30年ぶりとなる回顧展として、福岡市美術館では、イルフの視覚表現の広がりを感じさせる写真作品や絵画、そして各メンバーが作品を寄せたカメラ雑誌などの関連資料が一堂に会した。「イルフ」は何を目指して前進し、歩みを止めたのか。本展をインディペンデントキュレーターの長谷川新がレビューする。

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私たちは「写真」をどう語れるか。山本浩貴評 黑田菜月「写真が始まる」展

東京・馬喰横山のgallery αMにて、インディペンデント・キュレーターの長谷川新をゲストキュレーターに迎えたプロジェクト「約束の凝集」の第3回として、黑田菜月の個展「写真が始まる」が開催中だ。写真を媒介として展開される2つの映像作品が発表された本展を、文化研究者の山本浩貴がレビューする。

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知床、アマゾン、東京。3つの極点の交わりが開く新たなエコロジー観。太田光海評 上村洋一+黒沢聖覇「冷たき熱帯、熱き流氷」展

北海道オホーツク海など、自然環境のフィールドレコーディングを中心とする作品制作を行う上村洋一。キュラトリアル実践を通して近年の新しいエコロジー観と現代美術の関係性を研究し、作品制作も行う黒沢聖覇。トーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)の企画公募プログラム「OPEN SITE」では、新たな環境観を志向する2人の共同制作プロジェクトとして「冷たき熱帯、熱き流氷」展を開催した。上村は知床半島、黒沢はアマゾン熱帯雨林と、対照的な極点へ赴いた経験から生み出された本展について、自身もアマゾン熱帯雨林での調査経験を持つ映像作家、文化人類学者の太田光海が論じる。

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発音と聴取のあいだにある摩擦、遅延、移動。福尾匠評 大和田俊個展「破裂 OK ひろがり」

人間の身体や知覚と時間の関係について考察する作品を制作する大和田俊。その個展「破裂 OK ひろがり」が、栃木県の小山市立車屋美術館で開催された。体内の破裂音が響く展示空間や、風景のなかに突如現れる「ポンプ小屋」で展示された作品《Unearth》において、音の「必然性」はどのように提示されたのか。現代フランス哲学、 芸術学、映像論を専門とする福尾匠がレビューする。

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「空気と水」から生まれる心の還流。李庸宇評「梁慧圭(ヤン・ヘギュ) O₂ & H₂O」展

ヴェネチア・ビエンナーレ、ドクメンタ13などの大型国際展に招待されてきた韓国のアーティスト、梁慧圭(ヤン・ヘギュ)。その大規模な個展「O₂ & H₂O」が韓国国立現代美術館ソウル館で開催された。無形の経験や感覚をアートの抽象的な言語で置換する本展で、作家はどのような問いを投げているのか? 韓国西江大学トランスナショナル人文研究所研究教授の李庸宇が考察する(*1)。

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見えないものへの想像力を喚起する。山峰潤也評「スクリプカリウ落合安奈 越境する祝福」展

同時代に活躍する作家を紹介するプログラムとして、2016年より埼玉県立近代美術館で企画される「アーティスト・プロジェクト」。その5回目の個展に選ばれたスクリプカリウ落合安奈は、リサーチをベースに、土地に遺る記憶や信仰などをテーマに、異なる時空間にあるものを結びつける作品を手がける。近作4点で構成された小展について、ANB Tokyoディレクターでキュレーターの山峰潤也がレビューする。

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見えない力が切り開く地平の先とは。内海潤也評「MOTアニュアル2020 透明な力たち」展

東京都現代美術館にて1999年より、日本の若手作家によるテーマ展として毎年開催される「MOTアニュアル」。第16回を迎える今回は「透明な力たち」をテーマに、バイオ・アートやソフトウェア・アート、インタラクティブ性や参加型を含むプロジェクトなど、社会や自然のなかの不可視なエネルギーをモチーフとする作品で構成。時代の一側面を切り取ってきた同企画の試みを、キュレーターの内海潤也がレビューする。

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車中から問う、鑑賞体験と近代主義 中村史子評 ドライブイン展覧会「類比の鏡/ The Analogical Mirrors」

本展は、滋賀県・比叡山の中腹に位置するシェアスタジオ「山中suplex」にて2020年11〜12月に開催された。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、鑑賞者を車から降ろさず、感染対策を徹底したドライブイン形式を採用。日没後のみに展開される車中からの鑑賞は、どのような目論見を備えているのか? 愛知県美術館学芸員・中村史子が論じる。

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