なぜ、エアロゾルなのか? 蔵屋美香評 大山エンリコイサム「夜光雲」
「クイックターン・ストラクチャー(QTS)」をモチーフとするアーティスト・大山エンリコイサムの個展「夜光雲」。神奈川県民ホールギャラリーでの過去最大級となる大山の個展を、横浜美術館館長の蔵屋美香が作品の持つ構造と身体性から論じる。
「クイックターン・ストラクチャー(QTS)」をモチーフとするアーティスト・大山エンリコイサムの個展「夜光雲」。神奈川県民ホールギャラリーでの過去最大級となる大山の個展を、横浜美術館館長の蔵屋美香が作品の持つ構造と身体性から論じる。
2017年以降国内外での発表が相次ぐ泉太郎が、2020年9月にスイス・バーゼルのティンゲリー美術館で個展「ex」を開催。本展は、ネットワーク社会における「クラウド=雲」をテーマとした新作を軸に行われた。タイトルにも冠された「ex」をキーワードに、アーティストのキャリア、そしてその作品を貫く態度について清水穣が論じる。
コロナ禍のなか、全面的にオンラインで開催された「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ2020」と、佐渡島内の複数箇所で行われ来年本開催を予定する「さどの島銀河芸術祭プロジェクト2020」。「現代山形考〜藻が湖伝説〜」といったプロジェクトを含む前者と、PCR検査を導入したライヴなどを開催した後者のあいだの共通点とは何か? 椹木野衣がレビューする。
「翻訳」をコミュニケーションのデザインとしてとらえ、情報学研究の立場からドミニク・チェンが企画した本展。「互いに異なる背景をもつ『わかりあえない』もの同士が意思疎通を図るためのプロセス」としての翻訳の可能性を考えようとする挑戦的な内容を、物語論や言語哲学への関心を軸として制作する、アーティストの大岩雄典がレビューする。
3月に開館30周年を迎える芦屋市立美術博物館が、2020年9月から11月にコレクション展を開催した。30年の歩みのなかで収集してきたコレクションの全作家126名の作品群から、本展の企画協力者である福永信が選出し、学芸員が展示構成した約190点。同館をかたちづくる膨大な作品群と鑑賞者が対峙する空間において、本展ではどのような工夫がなされたのか? キュレーターの小金沢智がレビューする。
TALION GALLERYで開催された温田山、NAZE、大岩雄典による「一番良い考えが浮かぶとき」展。その関連動画としてYouTubeにて公開された本作は、会期中にあらわれた霊に、イラストレーターの山本悠と、大岩が迫るというもの。いくつもの伏線を抱えた本作の謎解きに、美術批評家の中島水緒が挑戦する。
東京・銀座の画廊香月にて、1950〜60年代に活動した前衛美術集団「九州派」の展覧会が開催された。九州を拠点としてアート界のヒエラルキーに挑戦した彼らの活動を、いま考える意義とは? 文化研究者の山本浩貴がレビューする。
石内都、大塚勉、今道子、髙﨑紗弥香、田附勝、中村綾緒、野口里佳、野村恵子。それぞれの作品世界も、世代も異なる8作家の新旧作品を「皮膚」というキーワードで組み合わせた企画展。厳選された作品群が描き出す“光と闇”、“生と死”の気配は、いま我々に何を想起させるだろうか? これまで写真展も多く手がけてきた、アーツ前橋学芸員の北澤ひろみが批評する。
男性優位構造のアート界に横行するジェンダーアンバランスや相次ぐハラスメント。この状況に対し、岩崎貴宏企画のもと16組のアーティストが展覧会というかたちで声を上げた。「カナリアがさえずりを止めるとき」と題された本展を、キュレーターの檜山真有がレビューする。
2020年6月から7月にかけて東京・六本木のシュウゴアーツにて開催された、アンジュ・ミケーレの個展「イマジナリウム」。 アルミの紙に円を描いたシリーズ「circle」を始め、24点近くの新作絵画がコロナ禍で発表された。同展が提示した精神性とこれからの時代への希望を、キュレーターの長谷川祐子がレビューする。
写真、彫刻、建築的介入からビデオ作品、インスタレーションまで多岐にわたる作品を手がけることで知られるアーティスト、ダグ・エイケン。その個展が、東京・表参道のエスパス ルイ・ヴィトン東京で開催されている。本展で展示されるのは、映像インスタレーション《New Ocean: thaw》。自然の氷河などをモチーフにしたこの作品が、現代に問いかけるものとは?
写真や映像、立体など様々なメディアを組み合わせたインスタレーション・アートを手がける武田雄介。「暴力的な現在を暴力的に切断」する試みとして開催された個展「眺望力」は、見る者にどのような洞察を促しただろうか。本展をキュレーターの檜山真有がレビューする。
美術手帖では、批評家や学芸員らによる展覧会レビューを毎月掲載。そのなかから、11月に公開された全11本をお届けする。各レビューの詳細はリンクから全文をチェックしてほしい。
今年開館した弘前れんが倉庫美術館にて、開館記念プログラムとして小沢剛による個展が開催されている。フィクションを織り交ぜ歴史上の人物をめぐる物語を描く「帰って来た」シリーズが一堂に会した本展を、文化研究者の山本浩貴がレビューする。
東京都美術館で開催された「都市のみる夢」は、アーティスト・コレクティブ「tmyc」による企画だ。都市に暮らす人々を「都市のみる夢」の住民ととらえ、中島りかとミズタニタマミがインスタレーション群「夢の蒐集」を披露した。詩人で情報科学芸術大学院大学(IAMAS)准教授の松井茂が、同展のカウンター・エキシビジョンとしての性格をレビューする。
群馬県立近代美術館で「佐賀町エキジビット・スペース 1983-2000 現代美術の定点観測」展が開催されている。本展は、小池一子が主宰したオルタナティブ・スペースの先駆け「佐賀町エキジビット・スペース」を、会場風景や実際の出展作品から振り返るもの。あるスペースを歴史化することの意義と問題を、研究プロジェクト「レントゲン藝術研究所の研究」などを行う鈴木萌夏が論じる。
絵画を中心に多様なメディアを用いながら、生や性のありようを表現してきた松下まり子。本展で発表した2019年後半から描き始めたという新作絵画には、ポーランドのアウシュヴィッツ博物館を訪れた経験や、コロナ禍における変化が大きな影響を与えているという。松下が2016年「第2回CAFAA賞」最優秀賞を受賞した際に審査員を勤めた画家の小林正人は、本展をどう見たか。
「国家安全法」の可決直前の香港や東京オリンピック・パラリンピック会場近くを舞台に個人の「秘密」を集め、それを作品化する「Superstring Secrets」プロジェクトを手がけた加藤翼。このプロジェクトを大がかりなインスタレーションによって見せた無人島プロダクションでの個展「Superstring Secrets」を、小田原のどかがレビューする。
サイコロ、トランプ、フィギュア、髑髏、月、そしてピラミッド。同じモチーフを繰り返し描き、イメージの次元やスケールを自在に変換しながら遊びの輪を広げていく鹿野震一郎。Satoko Oe Contemporaryにて「logs」と題した個展を開催した作家の時系列を揺さぶる絵画について、美術批評家の中島水緒がレビューする。
今年3月にオープンした新スペース「LAVENDER OPENER CHAIR」にて開催された斎藤玲児個展「24」と、横浜市民ギャラリーにて開催された地主麻衣子と山口啓介の2人展「新・今日の作家展2020 再生の空間」。コロナ禍に制作され、発表されたそれぞれの作品について、医療人類学者アネモリー・モルによる著書『ケアのロジック』を手がかりに、キュレーターの飯岡陸がレビューする。