ソー・ソウエン「Air Condition」(熊本市現代美術館)会場レポート。キーウで重ねた呼吸を通して示す「世界の分断への抵抗」

熊本市現代美術館で、ソー・ソウエンの個展「Air Condition」が開催されている。会期は8月23日まで。会場の様子をレポートする。

文・撮影=大橋ひな子(編集部)

ソー・ソウエン《Air Condition》(2026)ビデオ・インスタレーション、カラー、サウンド、モニター

 熊本市現代美術館で、ソー・ソウエンの新作を発表する個展「Air Condition」が開催されている。7月28日に発生した熊本地震の影響により一時休館を余儀なくされた同館だが、大きな損傷を免れたことで8月5日より開館を再開した。会期は8月23日まで。担当は同館学芸員の里村真理。

 ソー・ソウエンは1995年福岡県北九州市生まれ。2019年京都精華大学芸術学部造形学科洋画コースを卒業。「呼吸」「お臍」「卵」など生と密接な事象から人間の性質に迫る作品を多く手がけ、絵画作品を主軸としながら、ワークショップやインスタレーション、パフォーマンスなどを国内外で発表している。

 本展は、ソウエンがウクライナの首都キーウに渡航し、アーティストのマリア・クリコフスカ(1988〜)が主宰する「Garage33 Gallery-Shelter」に集う人々と制作した「呼吸」を主題とする新作を中心に構成されたもの。会場では映像作品3点と、本展へとつながっていくことになった2024年制作の映像作品1点が紹介されている。

 これまで一貫して「生」にまつわる作品を手がけてきたソウエンは、生命活動としての「呼吸」を「世界を物理的に変容させていく行為」と位置づける。吸い込み/吐き出すという行為によって身体に外界を通過させ、空気を微かに震わせて個と個の境界を撹拌すること。ソウエンはそうした日常的な生命活動を、「世界の分断へ抵抗する」ための行為として解釈する。

ソー・ソウエン《Air Condition》(2026)ビデオ・インスタレーション、カラー、サウンド、モニター

 そうした思考のもと制作されたのが、展覧会名と同名の《Air Condition》(2026)だ。会場奥のスペースでは、暗闇のなかに様々な人々のお臍の映像が浮かび上がる。本作はGarage33の呼びかけに応じたキーウの人々40名の参加によって実現した。オープンコールからわずか2日間で10代から60代までの幅広い層が集まり、スタジオで1人5分間ずつ呼吸の撮影と録音が行われた。ソウエンは、現地で出会った人々と時間を共有し、ときに相手の呼吸に自身の息を合わせながら撮影を進めたという。会場内に設置された20台のモニターからそれぞれの息遣いが響き、鑑賞者はその間を縫うように歩くことで、自身の呼吸へと自然に意識を向けさせられる。

編集部