上海外灘美術館「Youth Palace」から見る学びと、美術館という制度の主体性【4/4ページ】

「展覧会をつくる」から「場をつくる」へ

 こうした姿勢は、Xが2023年にアーティスティック・ディレクターに就任して以降、RAMで進めてきた取り組みとも重なる。ニューヨークのグッゲンハイム美術館でのキャリアを経て上海に拠点を移したXは、近年のRAMを展覧会の発信拠点にとどまらず、アーティストとの長期的な協働やリサーチ、教育実践のためのプラットフォームへと変化させてきた。

 その象徴的な取り組みには、学習やパフォーマンス、共同研究を軸に展開するハイブリッド・プラットフォーム「AUUUUDITORIUM」や、アジア各地の歴史や移動、地政学的な関係性を探る長期プロジェクト「Complex Geographies」などがある。これらのプロジェクトに共通するのは、完成された展覧会を提示することよりも、その過程で生まれる関係性や学び、対話そのものを重視する姿勢だ。

展示風景より Photo by Ling

 Xは今回の取材で、「美術館はもはや知識を一方向的に生産する場所ではない。むしろ重要なのは、異なる立場の人々がリスクを共有しながら対話し、新たな知識や関係性が生まれる条件をつくることだ」と語った。

 また、その先のRAMについて「アジアにおいて重要な場所であり続けることを望んでいるが、その中心にはなりたくない」という。Xが目指しているのは、欧米の評価軸を経由することなく、アジアのアーティストや研究者、機関同士が直接結びつくための基盤を築くことだ。そのために必要なのは、単発の展覧会ではなく、長期的な関係性を育むインフラだという。

 「Youth Palace」は、少年宮という歴史的制度を振り返る展覧会であると同時に、美術館という制度そのものを実験の場へと変える試みでもある。そこで問われているのは、私たちが何を学ぶのかではなく、誰によって、どのような制度のもとで学ぶのかという問いだ。制度の内部から生まれる小さな逸脱や実践の積み重ねにこそ、新たな公共性の可能性を見出そうとする本展は、現在のRAMの姿勢をもっともよく示すプロジェクトと言えるだろう。

編集部

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