上海外灘美術館「Youth Palace」から見る学びと、美術館という制度の主体性

上海外灘美術館(RAM)で、大規模グループ展「Youth Palace: or, some small acts of self-making」が開催中。社会主義時代の教育施設「少年宮」を手がかりに、美術館全体を学びと実践の場へと転換する本展。そこで問いかけられる教育や美術館の主体性を、館長兼チーフキュレーターのX・ジュー=ノウェルへの取材を通じて紐解く。※6月21日24時まで、すべての方に全文お読みいただけます。

取材・文=王崇橋(編集部)

展示風景より Photo by Ling

 中国の上海外灘美術館(Rockbund Art Museum、RAM)で、大規模グループ展「Youth Palace: or, some small acts of self-making」が開催されている。会期は9月20日まで。

 キュレーションを手がけたのは、2023年にアーティスティック・ディレクター、2025年に館長兼チーフキュレーターに就任した朱筱蕤(X・ジュー=ノウェル、以下X)。Xは、今年11月に開催されるアートウィーク東京において映像作品を上映する「AWT VIDEO」の監修も務める。

社会主義の教育空間を再解釈する

 本展は、中国やベトナム、韓国、日本、イタリアなどから集まったアーティストたちによる新作コミッションワークや既存作品の再構成を通じて、「少年宮(Children’s Palace)」という社会主義時代の教育制度を再考する試みだ。

 「少年宮」とは、旧ソ連を起源とし、中国やベトナムをはじめとする社会主義諸国に広がった児童・青少年向けの課外教育施設を指す。音楽や舞踊、演劇、美術、科学技術などを学ぶ場として整備され、国家による教育政策の一環として運営されてきた。

 また少年宮は、労働者階級の子供たちに文化教育の機会を開放するという理想を体現する場であると同時に、集団性や規律、社会主義的価値観を育成する制度でもあった。本展はそうした歴史的背景を出発点としながら、少年宮をノスタルジーの対象としてだけでなく、教育や訓練、自由や主体性をめぐる矛盾を内包した装置として捉え直す。

展示風景より

 Xによれば、本展における「Youth(若さ)」とは生物学的な年齢を意味するものではない。それは「つねに生成変化の途上にある政治的主体性」であり、固定化された歴史や制度を解体し、再びプロセスへと開いていく方法論でもある。展覧会は、美術館という制度そのものを問い直す場として構想されている。

 また本展では、美術館全体をひとつの「少年宮」に見立て、展示と並行して4ヶ月にわたるワークショップやレクチャー、パフォーマンス・プログラムを展開。Xは、少年宮だけでなく、学校や美術館といった制度(インスティチューション)がいかに人々を形成してきたのかを問いながら、新たな思考の可能性を探ろうとしている。

編集部

Exhibition Ranking