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「民具これなーんだ?──民俗学者・宮本常一が美術大学に遺した民具コレクション」(武蔵野美術大学美術館)開幕レポート。美術・デザインの視点から「暮らしの造形」を見つめる【2/3ページ】

なぜ美術大学に大規模な民具のコレクションが?

 同大にこれほどの民具のコレクションが収蔵された背景には、宮本常一の存在がある。宮本が所長を務めた近畿日本ツーリストの「日本観光文化研究所」(1966〜89)によるおよそ2万点の資料と、宮本と学生らによって結成された「武蔵野美術大学生活文化研究会」(1966)が収集した資料が、今日におけるコレクションの土台となったのだ。現在は美術大学の収蔵品として、生活文化の造形のアーカイブとして、学生たちの授業やリサーチ等に活用されている。

宮本常一の師であり、財界人でもあった渋沢敬三(1896〜1963)は、常民文化研究にも大きな役割を果たした。渋沢が初めて生活資料の収集・調査を始めた『民具蒐集調査目録』(アチックミューゼアム編著、1936)で、「民具」という造語が誕生した

 民俗学者として知られる宮本だが、大学ではどのような取り組みを実践してきたのか。「第1章 民俗学者・宮本常一のムサビ時代」では、大学人としての宮本の活動と、学生らによるカリキュラムの枠を超えた活動を資料とともに紹介している。

左は房総から三陸で見られる豊漁の祝い着「万祝(マイワイ)着」(東京都港区)で、渋沢が現地の人々から譲り受けたもの。右は荷物の運搬に使用される「蓑」(宮城県柴田郡川崎町)。この資料には「ムサシノビジュツ」という屋号が入れられており、学生らがフィールドワークを実施した現地の人々との信頼関係も見て取れる
宮本常一の活動を示す資料群。武蔵野美術大学への赴任が決定した際に宛てられた直筆の手紙も、本展で初公開されている

 本展の大きな特徴は、民具の資料展示に加えて、鑑賞者自らが参加することでより深い観察を促す参加型のプログラムが用意されている点にある。鈴木監修の「第2章 デッサンしよーぜ」は、NHK番組「みたてるふぉーぜ」のコーナー「デッサンしよーぜ」をもとにした参加型展示だ。民具の持つ造形的な特徴を、様々な視点で観察してみてほしい。

デッサンの対象となる資料がいったいなんの民具なのかは、あえて知らずに参加するのが面白い。資料は2週間ごとに入れ替えが行われる

 「第3章 民具のかたち百態」に並ぶのは、郷土玩具コレクションの華やかな「浜松凧」、そして多彩なバリエーションを持つ竹工芸コレクションの数々だ。同じフォーマットのなかでも様々な造形の違いが見て取れる。こうした比較をすることで、地域の特性や制作者の個性が初めてわかるのも、大規模なコレクションがあるからこそ実現することだ。

「浜松凧」の凧印は、地域の名称が図案化されており、一目でどの地域の凧であるかがわかる。竹工芸コレクションに見られる渋さのある茶色とカラフルな凧印のコントラストが美しい

編集部