ケニー・シャーフが伝えるヘリングの功績
第3部「ケニー・シャーフ」では、シャーフの作品が展開。冒頭では、シャーフが初来日する契機となった「アート・イン・アクション」展(1985、草月会館、東京)を、当時の作品の展示とともに、記録映像や資料などで振り返る。とくに、カラフルにペイントされたキャデラックに、ポップスターの仮装をしたシャーフが乗り込んで当時の東京を走り回ったパフォーマンス《夢の車》(1985)の記録映像は鮮烈だ。

また、シャーフの近作も数多く展示されている。『宇宙家族ジェットソン』(原題:『The Jetsons』、1962〜63)や『原始家族フリントストーン』(原題:『The Flintstones』、1960〜66)といった、ハンナ・バーベラ・プロダクション制作のアニメーションに幼少時から親しんできたというシャーフ。こうしたアメリカ製テレビアニメの絵柄や色彩が、作品に描かれたキャラクターに色濃く反映されている。

シャーフがヘリングに捧げた最新のペインティング作品も会場に並んでおり、とくに本展のための新作《Sky High Baby》(2026)は、ヘリングが亡くなったときに、追悼としてシャーフがニューヨークのストリートに描いた「ベイビィ」のイラストをモチーフとして取り入れたものだ。世を去ってもなお、赤ん坊のように再誕してメッセージを発信し続けるヘリングに対する敬意にあふれた作品だ。

インスタレーション《Cosmic Cavern》(2026)も、シャーフとヘリングの当時の協働をいまに伝える作品といえる。シャーフとヘリングは、タイムズスクエアの古い建物で暮らしたことがあり、そのロフトにある大きなクローゼットにブラックライトやさまざまなオブジェを用いて《Cosmic Cavern》という作品を制作した。本作はそのコンセプトを引き継いだ同名作品であり、当時のニューヨークでのふたりの関係性が内包されている。
死後35年を過ぎ、すでに伝説的なアーティストとして扱われることの多いキース・ヘリング。しかし、ケニー・シャーフのように当時のニューヨークのアートシーンをヘリングとともに生き、その思想をいまに伝えるアーティストが活動を続けている。本展はヘリングの足跡のひとつを辿るとともに、いまも「生きた」アーティストであることを示そうとする展覧会と言えるだろう。



















