はじめに──同時多発する展覧会
2025年前半は、ニューヨークやパリで重要なストリートアートの展覧会が相次いでいる。「アボヴ・グラウンド」展(ニューヨーク市立博物館)、「オス・ジェメオス:終わりなきストーリー」展(ハーシュホーン美術館)、「ラメルジー:アルファベータ・シグマ」展(パレ・ド・トーキョー)といった美術館クラスの展示に加えて、オルタナティブスペースやコマーシャルギャラリーでは「ゴードン・マッタ=クラーク:NYCグラフィティ・アーカイブ 1972/3」展(ホワイトコラムス)、「リペインティング・サブウェイアート」展(ウォールワークス・ニューヨーク)、「ザ・レジェンド・オブ・レジェンズ」展(スペールストラ・ギャラリー)といった専門性の高い展示も行われている。その多くは70〜80年代のニューヨークを起点に、ストリートアートの歴史を検証する取り組みである。このテクストでは、私が一週間ほどの旅程でめぐった各展示をレポートし、最後にそれらの背後に胎動する共通の関心から、歴史の構造を考察していく。

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