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舞台はサンパウロの「ボールの家」。建築とアートの調和を楽しむ第5回「アベルト」展をレポート【2/3ページ】

メタリックな空間に建築家をオマージュした作品が並ぶ

 カーザ・ボーラでの展示は、主に球体を頂に冠した建築家の住居と接続する3階建てのガレージ兼倉庫で行われ、総面積およそ1000平方メートルの会場にアーティスト46組による63作品が展示されている。

正面壁:ジャナイナ・チェッペ 無題 2026 キャンバスに油彩 280c×406cm 手前:エリカ・ヴェルズッチ カカオの塔とニュース 2025 ブロンズと新聞紙 50×260×33cm 撮影=仁尾帯刀

 地上階で目を引いたのは、エントランスとの対面の壁に展示された本展でもっとも大きいジャナイナ・チェッペの油彩画《無題》だ。絵画、ドローイング、写真、ビデオ、彫刻など様々な表現手段で、植物、水生生物、あるいは人間の営みといったテーマを作品に取り入れ、幻想と現実の境界を抽象的に描くのがチェッペの主な作風だ。展示作品から何かを読み解くのは難しいが、見るものの感覚を揺さぶる力強さがある。ニューヨークを拠点に活動するブラジル系ドイツ人のチェッペは、欧州、アメリカ、アジアで個展、グループ展を積極的に行っており、東京ではnca|nichido contemporary artでその作品が取り扱われている。

 展示会場のガレージは各階の中心部が四角い中空となっており、全フロアの床に金網状の建材・エキスパンドメタルが使用されている。地上階から中空あるいは網目越しに上階の作品が垣間見られることから、視線が上階を透過する独特な開放感と金属質の硬質感が感じられる空間となっている。

ラウラ・リマ ディスコ・ヴォアドール #39 202 鉄、アルミニウム、ガラスなど 160×100×70cm 撮影=仁尾帯刀

 地上階と2階の中空の吹き抜けに展示されたラウラ・リマのふたつの作品《ディスコ・ヴォアドール(未確認飛行物体)》は、金属とガラスの皿や調理器具を針金で巻き絡めて造形されており、廃材を積極的に再利用したロンゴの建築や、着陸した未確認飛行物体のようにも見える球体の家と調和した作品だ。

左:サンドラ・シント 母船の窓からI 2026 70×200cm 右:サンドラ・シント 母船の窓からII 2026 アクリル 70×200cm) 撮影=仁尾帯刀

 同じ2階に並んだサンドラ・シントの今年制作の2作品「母船の窓から」もまたカーザ・ボーラをテーマとして描かれた作品だ。絵画作品が宇宙船の母船から眺めた景色だとしたら、絵画中に描かれた円は母船を出発した脱出カプセルとしてのカーザ・ボーラか? とSF小説のクリティカルな一場面を想起させる。シントもまた日本との交流を深めているアーティストだ。銀座メゾンエルメス ル・フォーラムで2020年に個展「コズミック・ガーデン」を開催したほか、2015年には青森公立大学国際芸術センターで、2008年には豊田市美術館でのレジデンスに参加している。また、最上階の3階では壁一面にエドゥアルド・ロンゴ自身のクロッキーや写真などの建築企画に関する資料が展示され、加えてロンゴと同時代を生きてきたアーティストの作品が多数並べられた。

クラウディオ・トッツィ アストロノート 1969 アクリル 90×90cm 撮影=仁尾帯刀

 《アストロノート(宇宙飛行士)》はクラウディオ・トッツィの1969年の同名シリーズからの作品のひとつ。60年代にアメリカで隆盛したポップアートの流れを汲む作風で名を成したアーティストで、現在81歳にして現役で精力的に創作を続けている。1970年代には「ネジ」をテーマに多くの作品を残しているが、《アストロノート(宇宙飛行士)》を展示したのはカーザ・ボーラが携える宇宙船的な様相へのオマージュであろう。

ルイス・ゼルビニ エドゥアルド・ロンゴの素晴らしい旅 2026 アクリル 100×80cm 撮影=仁尾帯刀

 80年代のアートジェネレーション「ジェラソン80」のアーティストのひとりに数えられるルイス・ゼルビニは作品タイトルから明確なロンゴへの敬意を表している。今年制作されたアクリル画《エドゥアルド・ロンゴの素晴らしい旅》は、若き頃ヒッピー・ムーブメントの流れを受け、LSDなどのドラッグに奔放に溺れたロンゴが見たであろうサイケデリックな幻覚と未知の惑星とを重ね合わせたような作品となっている。

 展覧会への訪問者は、ロンゴの資料とロンゴにより近しいアーティストの作品が並ぶこの最上階に至り、そこから屋上へのスロープを渡って、いざ脱出カプセルさながらのカーザ・ボーラに向かう道筋となっている。鑑賞の最後にインスタレーションのようなロンゴの建築空間に立ち入る体験に高揚感が増す。

編集部